2023 Fiscal Year Annual Research Report
A15系超伝導体超細線ストランドケーブルの加速器用電磁石応用への技術的基礎研究
Project/Area Number |
22H03876
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
大内 徳人 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 研究員 (50194080)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 章弘 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (50343877)
有本 靖 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (90379280)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 超細線ストランド / Nb3Al / 超伝導ケーブル / 臨界電流値測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、熱処理後の超細線ストランドNb3Al超伝導ケーブルに機械的な曲げを与えた場合のケーブル臨界電流値に及ぼす影響に関する研究を開始した。これまで作成したNb3Alケーブルは、1.線径50μストランド7本撚りケーブルを更に7本撚り合わせた総ストランド数49本ケーブル(7×7)、2.線径50μストランド線49本を総撚りしたケーブル、3.線径33μストランド線111本を総撚りしたケーブル、4.1の7本撚りケーブルの中心の1組を線径150μの銅単線で置き換えたケーブルの4種類である。4種類のケーブルを熱処理し、室温で曲げ試験を行い最小曲げ半径を調べた。結果は、第1ケーブルR=10mm、第2ケーブルR=15mm、第3ケーブルR=15mm、第4ケーブルR=12.5mmで、これよりも小さい曲げ半径では全てケーブルが破断した。次のステップとして、曲げをケーブルに与えた状態で臨界電流値を測定し、機械的な歪による臨界電流値の劣化特性を測定した。この測定は、液体ヘリウム温度で行うことになるので、室温で許容曲げ半径が最も小さい第1ケーブル(7×7)について曲げ半径R=25mmからR=10mmまで2.5mmステップでケーブルに曲げを与え、臨界温度を測定した。曲げ半径R=15mmまでは、直線状態のケーブルの臨界電流値に対して大きな劣化は無かったが、R=12.5mmから臨界電流値が下がり始め、R=10mmでは17%の劣化が観測された。試験では、ケーブル温度も変数として変化させ臨界電流値への影響を測定した。 研究成果の発表は2023年9月10日から15日にかけてフランスで開催されたInternational Conference on Magnet Technology (MT-28)でNb3Alケーブル曲げ試験装置についての発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Nb3Alケーブルの熱処理後の機械的曲げの影響を測定するサンプルホルダーは、今回の研究開発では最も重要な装置である。最初に設計・製作を行ったホルダーは、全体が熱伝導の良い銅材を用いて製作した。このホルダーは、熱処理した直線のNb3Alケーブルを既定の曲げ半径を持つ溝に固定し、その後、ケーブル端部を電極に半田接続する設計であった。この為、ホルダー全体を加熱する必要があり、Nb3Alケーブルの試験ホルダーへの組込が非常に困難を要するものとなった。この装置に対して、ケーブルの取付には成功したが試験装置の温度制御が困難であることが判明し、ホルダー装置の再設計及びその製作が必要となった。現在使用しているホルダーでは、ケーブルへの機械的な曲げの付加、温度制御も成功している。以上のトラブルが、研究がやや遅れた理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに製作した4種類のケーブルに対して、第1ケーブル(7×7)と同様の機械的な曲げをケーブルに与え臨界電流値への影響を測定する。4種類のケーブルの機械的な曲げ、温度、磁場を変数とした臨界電流値測定を行うことにより、超伝導電磁石への応用を考慮した最適なケーブルパラメーターの評価を行う。 また、この曲げ試験結果と並行して、長さ1mのケーブルを用いてソレノイドを製作し、臨界電流値測定を行う。この試験結果と短尺ケーブルとの比較を行い、臨界電流値の劣化が観測された場合は劣化の原因の特定を行い超伝導コイル製作上の注意点としてコイル設計に反映させる。Nb3Alケーブルをソレノイドに成型する半径は、R=25 mm、R=22.5 mm、R=20 mm、R=15 mmを予定している。この臨界電流値の試験では、5Tまでの外部磁場をサンプルソレノイドに与え、外部磁場の影響についても測定する。 加速器用電磁石を製作する場合、ケーブルの電気絶縁は大きな課題となる。上記のケーブル本体の特性と並行して、ケーブル絶縁について材料・施工方式を研究する必要がある。加速器用電磁石(NbTi)ではポリイミドフィルムが一般的に使用されているが、今回開発を進めているNb3Alケーブルについてもポリイミドフィルムを用いた方式を検討している。絶縁処理を行ったケーブルを製作し、ケーブルに機械的な曲げを与えた臨界電流値の測定を行う。この試験は、電気絶縁材を含めたケーブル設計を行う上では非常に重要な試験となる。 以上の研究成果をもとに、加速器用電磁石の製作設計を行う。対象とする超伝導電磁石は、超伝導6極電磁石に組込まれる超伝導補正4極電磁石で、必要なケーブル長は70mである。この長さのケーブルを熱処理する方法の研究も必要となる。また、熱処理後のケーブルへの電気絶縁材の施工、加速器用コイル製作方法の研究も製作設計に含む。
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