2022 Fiscal Year Annual Research Report
共同養育とその心理基盤に関する比較認知発達科学的研究
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22H03908
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
瀧本 彩加 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (40726832)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 共同養育 / 比較認知発達科学 / 心理基盤 / ウマ / ウシ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、昼夜集団放牧されているウマとウシを対象に、継続的な行動観察と行動・生理実験を行うことで、養育スタイルの違いを考慮しつつ、共同養育を生む発達的背景や共同養育の機能・共同養育を支える心理基盤とその発達過程を比較検討する。具体的には、共同養育を生む発達的背景と個性(共同養育を行う個体と受ける個体が母を中心とした他個体とどのように関係性を形成してきたか、どんな性格特性を備えているか)や共同養育の機能(共同養育を行う個体と受ける個体において長期的・短期的にどんな利益があるか)、共同養育を支える心理基盤とその発達過程(共同養育を行う個体は行わない個体よりもどんな心理基盤を有し、それらがどう発達するか)を検討する。 今年度は、ウマの行動観察を実施し、共同養育を行う個体と受ける個体を特定し、共同養育を生む発達的背景や共同養育の機能を明らかにするためのデータの収集を開始した。今年度の観察からは、今年出産をしなかったメスのうち、経産・未経産によらず、半数の個体において、その個体との近接率の高い特定の母子ペアが存在することを示唆する結果が得られた。今後、データの分析を詳細に進めていき、そのメスの存在が母ウマの養育負担の軽減に寄与していることを確認しつつ、子育てを手伝い個体の個性についても検討していきたい。 なお、関連して、継続的な行動観察の結果、そもそも母ウマにおける子ウマへの母性行動や離乳作業による子ウマとの強制分離後の母ウマにおけるストレスにも個体差があることもわかってきている。前者には遺伝的基盤があり、子ウマへの近接の程度とオピオイド受容体μ1遺伝子多型に関連があること、後者には母ウマの年齢や離乳時の子の成長状態が影響し、母ウマが高齢または若齢の場合や離乳時の子ウマの体重が少ない場合にストレスが大きくなることを示唆する結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度、ウマの共同養育に関する行動観察を推進することはできたものの、同時に実施すべきであった共同養育を支えると考えられる心理を調べる実験や共同養育をすることで変化しうる生理指標の継時的な測定を実施することができなかった。ウシの予備観察についても実施することができなかった。ただし、「哺乳類学の百科辞典」(2024年刊行予定)の中の共同養育に関する項目の執筆を担当するなど、共同養育に関する知見を深め、次年度以降の研究の礎を着実に築いている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、想定していた以上に教育・アウトリーチ・成果の執筆活動に多くの時間を要してしまい、フィールドワークに出る機会が制限されてしまったこと、そのために、本年度予算の大部分を占めていた群れの全個体の生理指標の変化を測定するための機器(心拍計・GPSなど)の購入を見送ることになったことで、予算の大半を次年度に持ち越すこととなった。次年度以降は、指導学生や共同研究者の先生方にご協力をいただきつつ、必要な技術補助員を雇用して、ウマ・ウシの出産シーズンである春から継続した行動観察・心理実験・生理実験を実施しつつ、同時にデータの整理・分析を進めていきたい。そうして、学会などでの研究成果報告、論文などでの研究成果の公刊も積極的におこなっていきたいと考えている。
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Research Products
(4 results)