2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22H03949
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
川下 将一 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (70314234)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 智之 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50372305)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 窒化鉄 / ナノ粒子 / 微小球 / 磁気特性 / 発熱特性 / 温熱療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、患部を切除することなく、がん細胞のみを死滅させる機能温存療法の開発に大きな期待が寄せられている。磁性体を直径20~30 μmの微小球とし、肝臓がんの毛細血管に送り込み、患部を交流磁場の下に置けば、磁性体が発熱し、がん細胞を加温して死滅させることができる。これまでに研究代表者はマグネタイト(Fe3O4)含有微小球を開発してきたが、その発熱特性は臨床応用できるレベルには至っていない。一方、磁性体の発熱特性はその磁気特性(飽和磁化・保磁力)と関連している。そこで本研究では、Fe3O4(92 emu/g)よりも高い飽和磁化を有する窒化鉄(例えば、Fe16N2:240 emu/g)に着目し、従来のFe3O4含有微小球よりも高い発熱特性を有する、肝臓がん血管内温熱治療用窒化鉄含有微小球を創製することを目的とする。 2022年度は、窒化鉄含有微小球作製の前段階として、スライドガラス基板上への窒化鉄膜の形成を試みた。その結果、ホウ酸・フッ化水素アンモニウム・三フッ化鉄三水和物の混合水溶液にスライドガラス基板を30℃で48時間浸漬し、その後、基板上に形成された膜に鉄粉に接触させ、水素ガス中300℃で4.5時間、続いてアンモニア雰囲気中150℃で40時間加熱処理すれば、基板上に厚さ約500 nmの窒化鉄膜が形成されることが明らかとなった。また、ヘマタイトとナトリウムアミドを種々の温度および時間で反応させ、種々の窒素量および結晶子サイズを有する窒化鉄(ε-Fe2-3N)ナノ粒子を作製し、それらの磁気特性と発熱特性の関係を調べた。その結果、250℃、12時間の加熱により、飽和磁化29.4 emu/g,保磁力8 Oeのε-Fe2-3Nナノ粒子が得られ、同微粒子は100 kHz、125 Oeの交流磁場下で良好な発熱特性を示した。本研究により、ε-Fe2-3Nナノ粒子が磁気温熱療法の温熱種として有用であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は窒化鉄ナノ粒子の作製に成功し、その磁気特性と発熱特性の関係を明らかにできた。従って、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度以降は直径20~30ミクロンの窒化鉄微小球の作製に挑戦する。また、窒化鉄ナノ粒子については、その生体適合性や温熱治療効果を細胞を用いた実験により評価する。
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