2023 Fiscal Year Annual Research Report
Development of in vivo tissue engineering technology utilizing cell cross-linked hydrogel systems
Project/Area Number |
22H03961
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
長濱 宏治 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 教授 (00551847)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野寺 智洋 北海道大学, 大学病院, 講師 (70547174)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 細胞架橋ゲル / 組織工学 / インジェクタブルゲル / メカノバイオロジー / 間葉系幹細胞 / エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、細胞架橋ゲルの高い組織再生効率に関するメカニズムを検討した。細胞-アルギン酸間の連結によるメカニカルストレス伝導性を制御するため、細胞1つ当たりのアルギン酸との連結点数が0点/cell、0.74×10^10点/cell、1.7×10^10点/cell、2.0×10^10点/cellの4種類を作製した。連結点数によらず、細胞生存率は90%以上であり、長期培養しても高い生存率を維持した。一方、連結点数が高いほどゲルの力学強度が高いことを見出した。また、連結点数は細胞架橋ゲルの分解速度を決める重要な因子であり、連結点数が低いほどゲルの分解速度は早く、生体内残留性は低いことが分かった。さらに、細胞架橋ゲルに伸展刺激を与えて培養した場合、連結点数が高いほど細胞がメカニカルストレスを受容する効率が高く、メカノセンサータンパク質として知られている YAP の核内局在率が増大した。次に、ゲル-細胞間の連結によるメカニカルシグナルの効率的細胞伝達が液性因子の放出に及ぼす影響を調べた。再生効率を左右する液性因子としてエクソソームに着目し、連結点数が異なる細胞架橋ゲルでエクソソーム分泌量を比較した。その結果、連結点数が最大(2.0×10^10点/cell)の細胞架橋ゲルでエクソソーム分泌量は最大になり、ゲル-細胞間の連結によるメカニカルシグナルの効率的細胞伝達はエクソソームの分泌を促進することを見出した。細胞架橋ゲルによる骨格筋再生実験では、連結点数が高いほど組織再生効果が高いことも分かっており、細胞架橋ゲルが示す高い組織再生効率の一つは液性因子の分泌促進だと理解できた。また、軟骨再生効果を検証した。変形性軟骨症モデル動物を作製し、間葉系幹細胞架橋ゲルを膝関節内に注射し、4週後に進行度を調べた結果、無処置群より有意に軟骨組織の変性を予防し、進行を遅らせることを認めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、細胞架橋ゲルの高い組織再生効率を支える分子メカニズムを解明することを目指していた。具体的には、これまでのメカノバイオロジー研究より、力学刺激は細胞骨格アクチン線維のリモデリングを促し、次いでリモデリングに起因してHippo-YAP/TAZなどのシグナル伝達経路が活性化し、特定遺伝子の発現量を調整することが知られているため、メカノセンサーは何か?、アクチン線維のリモデリングは関与するか?、シグナル伝達経路・メカノトランスデューサーは何か?、細胞間コミュニケーションの関与は?、の4点を主に検討した。その結果として、上記4点を概ね理解することができた。 また、今年度は、細胞架橋ゲルの適応拡大を目指し、細胞架橋ゲルが有効な組織を調べることが目的であった。計画の通り、心筋、軟骨で細胞架橋ゲルの有効性を実証することができた。 以上より、計画の通り、本研究プロジェクトは概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も、以下の計画を進めることができれば、当初の研究目的を達成できると見込まれる。具体的な検討項目は以下の通りである。 1:筋分化した筋衛星細胞は配向性を高めながら融合して筋管細胞となり、次いで筋管細胞が既存の筋組織と融合することで成熟した筋組織を再建することが知られている。そこで本項目では、伸展培養装置を用いて筋組織と類似の力学刺激を再現したin vitro実験系で筋衛星細胞架橋ゲルを培養し、ゲル内の細胞が配向し、融合して筋管細胞となる過程を顕微鏡観察して定性・定量的に解析することで、力学刺激と配向・融合過程の相関を解明する。また、RFPを発現する大腿筋損傷マウスの損傷部位にGFP発現筋衛星細胞架橋ゲルを移植し、ホストの筋組織と融合して成熟していく過程を組織学的に解析する。坐骨神経損傷法により、大腿筋で発生する力学刺激を調整できるため、力学刺激を調整して同様な実験を行い、力学刺激と筋組織の成熟過程との相関を解明する。 2:細胞架橋ゲル技術の有効性を心筋および骨で検証する。各組織に対応する細胞(心筋:心筋前駆細胞、骨:骨芽細胞・間葉系幹細胞)で細胞架橋ゲルを作製し、各組織で発生する力学刺激と類似の環境を伸展培養装置によりin vitroで再現した実験系を用いて、力学刺激による細胞の分化・組織化の促進について、遺伝子レベル・細胞レベルで解析する。分化・組織化の促進を確認した組織では、対応する細胞架橋ゲルを各組織損傷モデル動物に移植し、遺伝子発現解析、免疫染色による細胞解析、組織学的解析、動物個体の生理反応解析などにより、再生が促進されるのか調べることで、細胞架橋ゲル技術の有効性を解明する。
|