2022 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanism of hallux valgus using 3D foot measurement system
Project/Area Number |
22H03995
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohto University |
Principal Investigator |
山下 和彦 東都大学, 幕張ヒューマンケア学部, 教授 (00370198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 満 昭和大学, 保健医療学部, 客員教授 (10300047)
花之内 健仁 大阪産業大学, 工学部, 教授 (40711643)
阿多 信吾 大阪公立大学, 大学院情報学研究科, 教授 (30326251)
大西 忠輔 城西国際大学, 福祉総合学部, 教授 (00720088)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 外反母趾 / 足部骨格3D構造解析 / スマートフォン / バイオメカニクス / 大規模コホート / 中足部回内 |
Outline of Annual Research Achievements |
外反母趾の発生メカニズムは十分に明らかではない.外反母趾は歩行により発生し,子どもや男性でも発症する.外反母趾の発生メカニズムが明らかにならなかった要因に,足部骨格を3次元的に評価できなかったことが挙げられる.そこで本研究では,バイオメカニクスの観点から外反母趾に関係する足部骨格構造と発症機序を明らかにするために,①スマートフォンを用いた足部3D骨格構造解析システムを開発し,②特徴量を評価する指標を構築する.さらに③開発した足部骨格の特徴量を大規模に解析し,横断的・縦断的研究である歩行足部コホートから拇趾角を増加させる特徴量,加齢変化,新しい評価方法を明らかにする. 本研究ではここまでに,スマートフォンによる足部3D骨格構造解析システムの基礎を開発し,舟状骨の3次元的指標(アーチ高,中心軸からの距離),拇指角など10以上の指標を構築した.舟状骨は外観から判断できない場合がある.本研究では精度を高めるために,まずは舟状骨の位置を外部から触ることで特定し,マーキングした. 本研究の特徴は足部骨格の関係を3次元に解析できる点にある.特に着目しているのは,舟状骨の横方向の動きと距骨の骨格のずれ,拇指角との関係である.成果として女性は加齢により舟状骨が下がるだけではなく,回内が大きくなり,これらが拇指角を予測する因子であることを明らかにした.これは歩行による荷重で中足部の機械的負荷が増大し,拇指角を増大させ,足関節,膝関節にも負荷を増大させる可能性がある.男性では舟状骨位置の大きな変化は確認されなかった. ここまでで,外反母趾の発生メカニズムには中足部の柔軟性や回内運動がかかわっており,内側・中間楔状骨のじん帯の緩みを誘発している可能性がうかがえた.このメカニズムに前足部アーチの低下がかかわると,リスクが増大すると予測される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①足部3D骨格構造解析システムの開発:本システムで用いるスマートデバイスはiPhone端末を用いているが,android端末でも使用可能である.足部の周囲画像を取得し,メッシュを1mmとし開発している.計測データはクラウド上に置くことで,解析が可能である.計測精度は1.7mmであることを確認した.解析精度を高め,距離情報を取得するための工夫を行い,概ね完成の域まで到達した. ②特徴量評価指標の開発:ここまでに舟状骨高,足部の第2指と踵骨を結んだ中心線と舟状骨距離が中足部の柔軟性の指標として有用であることを明らかにした.立位の荷重位,座位の非荷重位の動きを評価することで中足部のバイオメカニクスに言及している.さらに踵骨背部の距骨下関節角度,下腿部の向きから膝関節の向きを推定できるよう検討を進めている. ③足部骨格の特徴量解析のための大規模コホート:中高年3000人を対象に,追跡研究を行っている.足部の骨格は女性において加齢変化が大きいことが横断的研究からわかった.特徴として,舟状骨の回内,横アーチの低下と開帳足に変化し,拇指角が大きくなることがわかった.このメカニズムに言及し,重回帰分析から拇指角を増大させる要素を明らかにした. ④中足部の骨格評価手法の検討:ここでは開発している足部3D骨格構造解析システムに加えて,足底圧分布計測を組み合わせ,床面の荷重と上位の骨格構造の関係を明らかにした.足底圧分布の解析手法は独自にプログラムを開発した.その結果,足底圧により扁平化が進んでいる足部は中足部の回内が大きいことがわかった.一方で,中足部の接地面積が小さく,凹足傾向だが,中足部の柔軟性が高い割合も一定程度存在した.すなわち,足底圧のみでは骨格構造を推定することは難しいが,足部の骨格構造から床面への接地状況を推定できる可能性が見いだされた.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はいくつかの市で実施している「歩行と足部の大規模コホート研究」に組み合わせて行っている.そのため,都市部,雪国などそれぞれの持つ地域特性まで踏まえて検証を行う.本年度は特に下記の点について研究を進める. ・足部3D骨格構造解析システムと評価指標の開発:これまで開発した評価指標の有用性は評価ができつつある.まだ十分でないのは距骨下関節角度,膝関節の動きの評価である.すなわち,非荷重位-荷重位の変化により前足部,中足部,後足部がどのように動作し,膝関節の動きにつながるかを評価する.これはClosed kinetic chainの観点から足部の関節の影響を評価することにつながり,外反母趾の発生メカニズムに言及するための有用な知見を提供できると考える. ・これまで中高年にフォーカスしてきたが,外反母趾の発生メカニズムに関連する中足部の骨格の基礎ができるのは10歳ごろである.すなわち,子どもの頃に構築した骨格が一生涯に渡り影響することになる.しかし,健康な子どもの足部特性は明らかではなく,特に3次元構造については検討されていない.本研究では,子どもの外反母趾にもフォーカスし,中高年から得られた知見を組み合わせることで予防の方策を提案する. ・横断・縦断的大規模フィールドテストの実施:3000人の中高年の大規模フィールドテストを継続する.ここでは足部の計測データに加え,年齢,性別,毎日の歩数,下肢筋力の計測を行う.歩くことが疾病管理に重要だと言われるが,足部の骨格特性を踏まえた歩行と疾病構造は明らかになっていない.ここでは歩数,外反母趾や中足部回内などの足部特性,アルツハイマー病や心疾患,脳血管疾患などの新規疾病発症率を評価する.国保,後期高齢者医療費のレセプト解析プログラムは独自に開発する.
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