2023 Fiscal Year Annual Research Report
近世日本の学知と家伝史料:荻生家旧蔵史料と水戸徳川家旧蔵史料を中心に
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23H00571
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高山 大毅 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00727539)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原口 大輔 九州大学, 附属図書館, 講師 (00756497)
井田 太郎 近畿大学, 文芸学部, 教授 (20413916)
丸井 貴史 専修大学, 文学部, 准教授 (20816061)
河野 有理 法政大学, 法学部, 教授 (50526465)
村 和明 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (70563534)
金子 馨 公益財団法人出光美術館, その他部局等, 学芸員 (80633065)
山寺 美紀子 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (90601097)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 荻生徂徠 / 水戸学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年6月17日に研究会(東京大学駒場キャンパス)を行い、本年度の研究方針を相談し、以下のような研究を行った。 荻生家旧蔵史料に関しては撮影・修復及び燻蒸を行った。資料の参照が容易になり、目録の作成が進捗した。法政大学で保管されている徂徠関連史料についても状態が悪い貴重史料に関しては、修復を行った。また、代表者は本間美術館(山形県酒田市)と久留里城址資料館(千葉県君津市)で、荻生家旧蔵史料に関連する史料を調査した。荻生家旧蔵史料と関連史料の調査を通じて、徂徠学確立以前(正徳期まで)の徂徠の思想が、徂徠学とは異なる独自の体系性を有していることが明らかになった。これについては2024年度に学会発表をする予定である。2024年1月16日にオンライン研究会を開催し、分担者の山寺美紀子氏が「荻生家旧蔵史料の音楽に関する史料について」という題で発表を行い、荻生家旧蔵史料の音楽関連史料について議論した。 2023年9月20日~21日、12月22日~23日、2024年に1月12日~14日に、徳川ミュージアム(茨城県水戸市)で、水戸徳川家旧蔵史料の調査を行った。9月の調査では、史料の概況の把握に努め、具体的な調査手法について検討した。12月調査では、分担者の井田太郎氏・金子馨氏が書画の調査を行った。文献類の調査に関しては、本研究の期間は徳川斉昭関連の史料に焦点を当てることにし、1月の調査では、代表者の高山大毅と分担者の金子馨氏・丸井貴史氏・村和明氏で、斉昭の著作及び書簡を調査し、書誌データを取った。斉昭の書簡は驚くべき量が伝存しているため、いくつかの書簡を開封し、今後の調査の進め方について話し合った。 荻生家旧蔵史料と水戸徳川家旧蔵史料を並行して調査する過程で、代表者は大名家の学芸の担い手の具体的なあり方について関心を深め、平安期の教養人と比較を行い、書評報告の形でその成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度ということで、荻生家旧蔵史料に関しては、燻蒸・修復・撮影とした基礎作業を行うことが2023年度の重要な目標であった。荻生家史料の燻蒸作業は終わり、多くの貴重資料を予算が許す限り撮影した。また、虫損や固着がひどく、扱いが難しかった史料についても、分担者から、文書類の修復について具体的な教示を得ることができ、修復を進めることができた。また、他機関所蔵の関連史料の調査に関しても順調に進捗し、荻生家旧蔵史料と組み合わせることで新たな知見が導き出せる史料がいくつか見つかった。 水戸徳川家旧蔵史料に関しては、2023年度中に3回調査を行うことができた。本研究のメンバーは、歴史学・文学・美術史学・音楽史学といった複数領域の研究者で構成されており、それぞれの領域ごとに調査手法が異なるため、史料の性質に合った調査手法について、史料の現物を見ながら、検討することができた。膨大な水戸徳川家史料を調査するに当たっては、徳川斉昭関連の史料を端緒とするのが妥当であろうという見解が得られ、目録作成作業の具体的な方針も定まった。 研究会では、専門領域を越えて様々な知見を交換することができた。史料の整理・調査を柱とする研究であるため、初年度は直接両史料を扱った研究業績は少ないが、当初予定通りに着実に研究は進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の4点の研究方策を考えている。昨年度に引き続き、研究会を開催し、複数領域の知見を結集して、荻生家旧蔵史料と水戸徳川家旧蔵史料の分析に当たりたい。 ア荻生家旧蔵史料の保管処理と目録作成:引き続き、未整理の史料を調査する。昨年度の予算では修復ができなかった稿本類で状態の悪いものについては修復を行い、内容を検討する。修復と併せて撮影も行う予定である。目録に関しては本年度中におおむね完成に至ることを目標とする。 イ荻生家旧蔵史料の内容検討:昨年度、荻生家旧蔵史料には徂徠の初期思想に関する重要な資料が含まれていることが明らかになった。そこで、それらの分析成果について学会などで発表したい。また、研究上の価値の高い史料に関しては、翻刻・注釈を紀要に掲載することを考えている。 ウ水戸徳川家旧蔵史料の調査:本年度は、徳川ミュージアムで4回調査を行うことを考えている。美術品については所蔵番号順に調査を行い、文献・文書に関しては、徳川斉昭関連の史料について調査を行う。斉昭の膨大な書簡に関しては、大学院生に謝金を払い、人員を確保し、効率的に調査が進められる方式を確立したい。 エ水戸徳川家旧蔵史料の分析:2023年度の調査の段階で、従来、研究に活用されていなかった斉昭関係の史料の調査を行っており、本年度の調査の成果と合わせることで、徳川斉昭の思想や政治行動について分析を行いたい。また、水戸徳川家の書画・音楽に関わる活動についても斉昭時代を軸に検討を進めていきたい。
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