2023 Fiscal Year Annual Research Report
Ancient Pyramids and "World" Pease: Their Birth and Renewal by Ideological Transformation
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23H00698
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
嘉幡 茂 京都外国語大学, 京都外国語大学ラテンアメリカ研究センター, 客員研究員 (60585066)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | メソアメリカ / トラランカレカ / 世界観 / シンボリズム / ピラミッド / 物質化 / 古代都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
古代メソアメリカ文明(前2000~後1521年)のピラミッドは、古代人が神々と交信するために建造された身体機能を拡張させる装置であり、この社会的重要性から各集団のシンボルとして機能したと考えられる。そして、「世界の平和」を守るために開発・建造されたとの仮説を検証することが本研究の目的である。古代人が認知した「世界(象徴空間)」、そして、古代人が日々の暮らしを行う「世界(実社会)」の両者を守るために、ピラミッドは存在したとの観点から研究を進めている。 現在まで、ピラミッドは身体機能の拡張を果たす装置であるとの観点から研究されてこなかった。それは、エジプトのピラミッドや我が国の古墳のように、為政者を埋葬する装置であるとの前提から研究が進められているからである。メソアメリカにおけるピラミッドの建造は、そもそも為政者が登場する前から始まっていた。この事実を詳細に把握するため、まず先行研究の精査を行った。 次に、当初の予定通りトラランカレカ遺跡のピラミッドBで発掘調査を実施し、仮説を実証するためのデータ収集を行った。結果、雨乞い儀礼を行ったと推測できる埋納遺構、トラルテクトリ神( Tlaltecuhtli;大地の聖獣)を表現したと考えられるモザイク遺構、人身御供の埋葬墓などが検出された。ピラミッドが単なる墓として機能したという従来の常識を覆すデータであると言える。一方、出土遺物(主に土器、黒曜石、土偶、建築資材)の肉眼・科学分析を行い、各遺構の正確な用途を理解するための研究も実施した。 他方、本課題研究では地域支援も視野に入れた活動も行っている。地方博物館に調査の成果を提供し感謝状が贈られた(2023年8月21日)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究実績の概要】で述べたように、予定していた活動の大部分を実施することができ、また貴重なデータを収集することができたため、この評価を選択した。現在は、次年度の調査を実施するため、メキシコ国立考古学審議会に提出する報告書を作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的を達成するため、2年間で以下の4つの課題(①~④)を遂行していく。令和5年度と同様に、トラランカレカ遺跡を中心に研究を実施する。①自然地形を利用した祭壇の発生過程と時期の解明、②人工的に建造された初期ピラミッドの発生過程と時期の解明、③初期ピラミッドの更新過程と多様化に関する研究、④古代人の暮らしと交易網の変化に関する研究。 令和6年度は、特に課題③の解明を進める。 本年度は「ピラミッドB(最終時期:東西約62m×南北約41m×高さ約33m)」で大規模な発掘調査を行い、多数の遺物ならびに重要な遺構を検出した。令和6年度は、メキシコにおいてこれらの分析を中心に課題の解明に努める。現地では出土遺物の肉眼分析だけではなく、主に土器、石器、建築資材の科学分析(蛍光X線(XRF))とX線回析(XRD)等)をメキシコ国立自治大学(UNAM)・物理学研究所で実施する予定である。さらに、当該遺跡で表面採集そして測量調査を行い、データの収集を行う。これに加え、④の課題を進めるためトラランカレカ遺跡近郊に位置する遺跡を訪問する。 他方、遺跡のあるサン・マティアス・トラランカレカ村は部外者に対して閉鎖的であり、外国人の調査を歓迎しない傾向にある。地域との協力関係を必要とする本課題研究において、社会的コンセンサスを得ることは極めて重要であるため、現在までに行ってきた調査の成果を自治体が運営する地方博物館に提供し情報発信に努める。
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