2023 Fiscal Year Annual Research Report
シルクロード都市における宗教の伝播と受容・変容に関する考古学的研究
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23H00703
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
寺村 裕史 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 准教授 (10455230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇野 隆夫 帝塚山大学, 文学部, 客員教授 (70115799)
村上 智見 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 特任助教 (70722362)
末森 薫 国立民族学博物館, 人類基礎理論研究部, 准教授 (90572511)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 宗教 / ソグド人 / オアシス都市 / シルクロード / ゾロアスター教 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年(2023年)9月に、ウズベキスタン共和国・サマルカンド市に所在するサマルカンド考古学研究所(以下、考古学研究所)と国立民族学博物館(民博側協定担当責任者:寺村)との間で、学術協力に関する協定を締結した。本研究は、その協定のもと調査・研究を実施したものである。 本年度は、9月に現地に赴き協定を締結したのちに、考古学研究所の研究員と調査方針に関する打合せを実施し、サマルカンド近郊に所在する古代のオアシス都市遺跡であるカフィル・カラ遺跡の市街地エリアの発掘調査を実施した。成果としては、昨年度までの調査で明らかとなっていた大型建物(大ホール)から南に続く通路の先に二つの部屋を確認し、アフラシアブの「大使ホール」として知られるバルフマン王の宮殿とも類似する大ホールの特徴的な構造に加え、本年度発掘された二つの部屋も含めた大型建物全体の構造の一端を明らかにすることができた。 そして、それらの成果を、日本西アジア考古学会主催の『第31回 西アジア発掘調査報告会』において、協定先機関所属の研究者との連名で口頭発表をおこなった。またその発表内容に関しては、『第31回西アジア発掘調査報告会報告集 -令和5年度考古学が語る古代オリエント-』として刊行されている。 10月には、名古屋大学で開催された国際セミナー『ウズベキスタンの考古遺物の保存と公開に向けた取り組み』(名古屋大学最先端国際研究ユニット「文化遺産と交流史のアジア共創ユニット」/名古屋大学人文学研究科附属文化遺産テクスト学研究センターの共催)において、「サマルカンド南東カフィル・カラ遺跡の発掘調査と、出土遺構の保存・活用」という題目で研究講演を行ない、出土した建物遺構やゾロアスター教関連の木彫板の保存と活用などについて、研究者間でのディスカッションを通じて、古代の人々の暮らしや宗教観に関する議論を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、サマルカンド考古学研究所と国立民族学博物館との協定の締結に加え、カフィル・カラ遺跡での発掘調査において重要な建物遺構の構造を把握できたこと、またそれらの調査成果を関連学会において発表することができたことなどから、おおむね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度に引き続き、現地の気候の良い8月後半~9月頃にかけての約3週間の予定で、サマルカンド考古学研究所と協働し日本・ウズベク共同調査隊を組織したうえでカフィル・カラ遺跡の発掘調査をおこなう。 具体的には、昨年度に実施した市街地エリアでの調査を継続する。さらに、遺跡内の未発掘箇所(城塞周辺部や墓地)をトレンチ調査することで、その他の宗教関連資料のより詳細な情報を得ることを目指す。さらには、現地の博物館等での宗教関連資料の収集調査を実施する予定であり、現地研究者とも議論しながら研究を進める。 また、日本に帰国後は、現地で得られた情報をデータ化しGISを用いた分析をおこない、科研費の研究分担者の間で分析結果の共有、ならびにデスカッションを通じて検討を進める。発掘調査成果に関しては、日本西アジア考古学会や情報考古学会等の関連学会での口頭発表・ポスター発表や、調査研究成果として学会誌への論文投稿を予定している。
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