2023 Fiscal Year Annual Research Report
Research on the Role of Private International Law for building the trustworthy Global Value Chain
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23H00756
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河野 俊行 九州大学, 法学研究院, 特任研究員 (80186626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 剛 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00334300)
八並 廉 九州大学, 法学研究院, 准教授 (20735518)
VAN・UYTSEL S 九州大学, 法学研究院, 教授 (30432842)
加賀見 一彰 東洋大学, 経済学部, 教授 (50316684)
M・D FENWICK 九州大学, 法学研究院, 教授 (90315036)
羽賀 由利子 成蹊大学, 法学部, 教授 (90709271)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | グローバルヴァリューチェイン / サプライチェイン / 人権 / 環境 / 域外適用 / 国際私法 / 国連人権理事会 / EU |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、①GVCを対象とする環境・人権保護公法規制の現状マッピング、②GVC規制の進むEU法の調査、③公法選択の方法論開発、の3つを柱として進める計画であった。 ①の公法規制の現状マッピングについては、日本法、ドイツ法、フランス法、イギリス法、アメリカ法を中心とする調査を行った。その結果、主要市場国の法状況は、大別して(1)ソフトローアプローチ(日本)、(2)情報提供を促し透明化を目的とするハードローアプローチ(英国、米国)、(3)企業にデューディリジェンス義務を課し、義務が満たされない場合には制裁を課すことも想定したハードローアプローチ(ドイツ、フランス)の3つに分類できることが明らかとなった。また国連人権理事会で検討中のbinding instrumentに関する調査も行った。 ②については、EUデューディリジェンス指令策定の進行状況を丹念に追い、2023年12月のEU機関間合意、その後のドイツを中心とする政治的揺り戻し、そして2024年3月の妥協案による最終合意に至るまで最新の情報を入手してフォローした。 ③の公法選択の方法論開発については、計10回の研究会を開催し、様々な方向からの可能性を検討した。この一環として、AIによるESG評価指標を開発した九大発スタートアップである株式会社aiESGの関CEOと研究会をもって意見交換を行った。 さらに、研究代表者による国内外の学会での報告3回及び外国大学における講演1回のほか、本研究プロジェクトメンバー4名が参加し、ベトナム法務省と協働してハノイで2日間に及ぶワークショップを主催した。これにはベトナム各省庁及び主要大学研究者が参加し、活発な意見交換が行われた。またベトナムの有力弁護士事務所におけるワークショップも開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度には、①現状マッピング、②EU法の調査、③公法選択の方法論開発の三つの調査を予定していた。①については、判例法を含むフランス、ドイツ、英国、米国の人権・環境とGVCに関する法状況を明らかにすることができた。②についても、EUの人権環境デューディリジェンス指令に関するEU委員会案、EU評議会案、EU議会案、2023年度の最終案、2024年に入っての反対論、そして2024年3月の最終妥協案までをフォローし、2024年夏ごろまでには正式採択されると思われる指令の成立時には直ちに次の分析を開始することができる。③については、公法の抵触という考え方そのものの考察から始め、国連人権理事会のbinding instrumentにおける議論なども参考にしつつ、国際学会における議論も利用しつつ、解釈論、立法論として可能な議論を開発しつつある。AI利用に関してはaiESG社と意見交換を進めた。 さらにベトナムで行ったワークショップは2024年度以降に予定される実態調査の基盤形成に役立った。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では、2024年度は、①GVCを対象とする環境・人権保護公法規制の現状マッピング(継続)、②ヴェトナムにおける実証分析、③日本の技能実習制度・特定技能制度調査、④方法論開発(継続)を予定していた。 ①は、2024年中の成立が確実になったEUのデューディリジェンス指令のEU内及び非EU圏における影響を分析するとともに、判例法の進展に目配りをする。とくにEU指令案最終合意のための妥協により、EU指令レベルで規制対象になる企業の規模と各国国内法レベルで対象になる企業の規模でずれが生じうることになることに注意する。②については、2023年度にベトナムでワークショップを開催して下準備を進めており、サーベイによるサプライサイドの状況を調査する。③については、日本の労働法改正が行われたことを受けて、実務家からの意見聴取を中心に改正による影響を分析する。④については、これまでの議論が企業の行動をどう規制するか、という観点が基本であったところ、消費者の観点から考えると、GVC全体に対して責任を問う発想があり得うるため、その基礎となりうるネットワーク責任という新たな視点からの検討を試みる。これによって検討してきた公法の抵触という発想の通用性を検証するということでもある。AIの利用可能性については、ESG指標を策定するためのLLM構築基礎データが英語データに偏っていることから、法的責任論の根拠になりうるかが未解明であるため、さらに検討を継続する。
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Research Products
(6 results)