2023 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on Hybridity and Adaptation between Traditional and Modern Institutions for Conflict Resolution in Asia
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23H00794
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
上杉 勇司 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (20403610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香川 めぐみ 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授(任期付) (60596774)
堀江 正伸 青山学院大学, 地球社会共生学部, 教授 (70806819)
宮澤 尚里 早稲田大学, 社会科学総合学術院(先端社会科学研究所), 主任研究員 (80625476)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 紛争解決 / 慣習法 / 東南アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
東南アジアの伝統的な紛争解決方法と近代的な紛争解決方法の相互作用(ハイブリッド化や適応の過程)を明らかにするため、インドネシア、東ティモール、フィリピン、マレーシアの事例研究を実施した。研究代表者と分担者は定期的に研究会を開催し、それぞれの研究の進捗を報告するとともに、相互の担当事例の間で見られる共通点や相違点について意見交換を行なった。今年度は、研究計画に基づき、3つの研究命題のうち、各担当地域における伝統的な紛争解決方法について研究を進めた。Adatと呼ばれる慣習法を各事例に横断的な共通点として着目し、現地調査では、Adatの適用例を中心に聞き取り調査を実施した。研究代表の上杉は、インドネシアの裁判所にて現代法制上のAdatの位置づけを聞き取り、イスラム法が提供されている地域であるアチェ州にて、シャリア(イスラム法)、Adat(慣習法)、近代法の3種の適用事例を調査した。とりわけ、どのような紛争解決手法が学校教育のなかで紹介されているのか現地のイスラム学校への聞き取りも実施した。上杉と分担者の宮澤は、インドネシアのなかでもヒンズー教徒が多く住み、Adatが頻繁に用いられているバリ島を訪問し、近代法体系のなかでのAdatの位置づけを調査した。分担者の香川は、シャリア、複数のAdat、近代法が併存しているフィリピンのミンダナオ地域(イスラム法が提供されている自治区内)における紛争解決手法を調査した。分担者の堀江は、東ティモールとインドネシアの西ティモールの国境地帯におけるAdatの適用事例を調査した。Adatなどの慣習に基づき、非公式の人的交流が公的な法体系の外で実践されている現実を調べた。さらに、東ティモール伝統・慣習の専門家とミンダナオの地域専門家を海外から招聘して国際研究会も開催し、他の研究者や学生向けに研究成果の途中経過を報告し、フィードバックを得る機会を設けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者と分担者は定期的に連絡を取り合い、研究成果の途中経過を共有することで、互いに刺激を与えつつ、研究の一貫性を保つ形で、努力してきたため、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査対象地域の研究協力者との連携を深め、可能な限り、国際的な共同研究の機会を設けていく。今年度は第2の研究命題(近代法と慣習法が相互作用を経て、どのように適応・変容したか)の研究に取り組むため、それぞれの担当地域の現地調査を実施し、各事例を深掘りしていく。現地調査の結果と昨年度の研究成果を論文に取りまとめ、日本国際政治学会の年次大会で報告し(本研究チームでパネルを提案)、他の研究者からのフィードバックをもらい、分析の精緻化を図る。昨年度は、インドネシアの西ティモール、フィリピンのミンダナオ、東ティモールに焦点を当てた国際研究会を開催したので、今年度は、インドネシアのバリに焦点を当てた国際研究会を早稲田大学にて実施する。今年度はマレーシア(サバ地域)に関しては文献調査を中心に取り組み、次年度以降に現地調査を実施する。上記の日本国際政治学会で報告した論文を英語に翻訳したものをAsian Journal of Peacebuildingに特集号として出版することで、研究成果を体外的に発信していく。
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