2023 Fiscal Year Annual Research Report
Quantitative Analysis of Economic Evaluation and Investment Incentives for Variable Power Sources in Electric Power System in Japan
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23H00811
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大橋 弘 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (00361577)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 豪 東京経済大学, 経済学部, 教授 (60323812)
西川 浩平 関西大学, 経済学部, 准教授 (60463204)
五十川 大也 大阪公立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (90708645)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 発電投資 / 需要抑制 / ディマンドリスポンス / メリットオーダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、電力需給バランスにおいて、世界的に課題となっている「変動電源」の影響を定量的に経済評価することを目的にする。「変動電源」として、太陽光や風力など自然に変動して制御できない再生可能エネルギーと、時間とともに変動する電力需要が挙げられる。世界的な電力供給の不足が深刻化するなか「変動電源」を電力システムに統合した経済評価を行う必要がある。本研究では「変動電源」の経済価値を計測する手法を提示し、わが国の実情に応用することで「変動電源」が発電投資に対する影響と、わが国の電力システムに果たしうる役割について新たな知見の提供を目指している。本研究では、「変動電源」として、太陽光や風力など自然に変動して制御できない再生可能エネルギーと、時間とともに変動する電力需要を扱いつつ、「変動電源」を電力システムに統合した経済評価を行うことを目的にし、前者のデータ整備を行いつつ、先行して産業用需要における価格制御に関して定量的な分析を行い、VOLL(停電価値)の推定を行った。また電力市場における競争政策の観点からの人工知能などの活用、競争政策の実証的な分析手法の適用、また電力システムにおける産業政策上の位置づけ、さらに電力セクターが大きな役割を果たすカーボンニュートラル(脱炭素化)において、とりわけ交通セクターに与える影響の大きさなどについても考察を加えた。競争政策の観点では、電力市場における価格の乱高下を踏まえ、マークアップ率における扱いなどについても検討を加えた。また電力システムと同様に、送配電網において規制的な価格付けがなされている状況と類似する側面を持つ、医薬品の価格づけについて、考察を加え、電力システムに対する含意を他産業の観点から探った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発電投資誘因を明らかするために必要な発電や入札に関する情報を収集するとともに、負荷抑制による費用対効果分析に必要な分析を行った。前者については、発電設備の事故情報と入札情報などを組み合わせて、規制制度の情報を加味しながら、発電に関する分析モデルを考察している。後者については、ある地域における産業需要家をサンプリングし、その産業需要家に対して、需要抑制をリベートを使って行った場合に、その価格シグナルがもたらす需要抑制への影響を定量的に分析した。価格を通じて産業用の需要を低減させることで、発電と等価となる供給を生み出す手法に対して、その手法の有効性や費用対効果を分析を行った。価格シグナルは需要抑制に一定程度の影響を生み出すことが明らかになった。なお需要抑制の効果を測定するにあたっては、需要抑制がない場合にどの程度の需要が存在したかというベンチマークを設定する必要があるが、このベンチマークは反実仮想での評価となる(つまり需要抑制がなければ、どれだけ需要が存在したかということ)。反実仮想での評価を行うために、構造推定モデルを活用し、評価を可能としている。この構造推定モデルを用いて、需要抑制の費用対効果についても定量的な分析を行った。需要抑制が行われなかった場合という反実仮想との比較における費用対効果分析は、需要抑制が、発電と等価である点で、発電投資のインセンティブの理解にもつなげることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
産業需要家における需要抑制の効果を発電におけるメリットオーダー(限界費用の低い順に発電源を並べたもの)に入れることで、発電投資の誘因に対する分析フレームワークに取り込むことを次のステップとする。発電に関するデータの利用可能性と、構造推定モデルにおける分析のフレームワークの精度とを併せていく作業を今後の研究にて行うことになる。需要抑制についても、これまでの分析から深堀を行う。例えば、需要抑制においては、事前告知が行われることがあり、データ上も観測されているが、事前告知のタイミングに応じて、価格シグナルの影響に変化が現れることが分かった。この事前告知と価格シグナルの影響との関係について、経済モデルを使って更なる理解を深めることも試みたい。また需要抑制の分析の副産物として、停電価値(VOLL)が需要家に応じて異なることが明らかになった。容量市場における指標価格を形成するベンチマーク(ネットコーン)は、VOLLから計算されるとされるが、このときのVOLLは一律であり、需要家の多様性を直接は認識していない。VOLLと発電投資誘因との関係を定量的に明らかにしつつ、再エネの導入拡大や需要抑制のメカニズムをデザインとして取り込むグランドモデルを構築することを目指したい。他方で、現実のデータでは競争歪曲行為などがあることも考えられることから、そうした競争歪曲行為に対するデータ上の識別についても考慮に入れていきたい。
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Research Products
(8 results)