2023 Fiscal Year Annual Research Report
Fairness preferences and subjective beliefs toward future generations: Theoretical and empirical studies
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23H00814
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
横尾 英史 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (80583327)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 臨太郎 国立研究開発法人国立環境研究所, 社会システム領域, 主任研究員 (30557179)
釜賀 浩平 上智大学, 経済学部, 教授 (00453978)
澤田 真行 一橋大学, 経済研究所, 講師 (70861011)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 環境経済学 / 将来世代 / 社会的選好 / 主観的信念 / サーベイ実験 / グリーン技術 / Climate Tech |
Outline of Annual Research Achievements |
環境問題はしばしば「世代間の問題」となる。例えば、現在の温室効果ガス排出が将来の地球の気候変動を引き起こす。また、原子力発電で生じる放射性廃棄物の処分には数千年、数万年の管理が必要となる。さらに、生態系の破壊や種の絶滅は不可逆的である。個人の意思決定のうち、これら超長期の環境問題に関係する選択を決める要素は何だろうか?あるいは、環境に配慮した選択の背後にある選好や価値観は何だろうか? 環境経済学のリテラチャーでは実験経済学の成果を活用し、環境配慮行動と相関する選好の実証研究が進んできた。その先行研究では同時代の「他者」に対する選好の異質性が研究対象となってきたといえる。では、これから生まれる世代、すなわち「将来世代」に対する人々の利他性・不平等選好についても同様の分析が可能ではないだろうか。この選好を実証研究することが環境問題に関連する個人の選択を深く理解する上で有用となるのではなかろうか。 本研究では不平等回避選好や公平選好の研究を将来世代に対する選好の研究へと拡張することで「将来世代選好」の推計に取り組む。オンライン・サーベイ実験を用いて選好パラメータを推計する枠組みを開発し、事例研究を行う。その際には、社会的望ましさバイアス、実験者需要効果、因果推論上の問題、仮想バイアスに対処する。 令和5年度は「同時代を生きる次の世代」に対する「公平選好」を抽出したサーベイ実験のデータを分析し、論文化した。そして、北米拠点の環境・資源経済学会(AERE)夏季大会で口頭発表を行った。加えて、「世代間衡平性」に関する経済学理論研究のレビューを行った。また、「将来世代」に対する選好を抽出するためには、未来の社会・環境に関するシナリオが必要となる。そこで、気候変動問題に関連する新技術(Climate Tech)の動向を国内外で調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世代間衡平性の経済学理論の研究を着実に進められ、収集済みのデータの分析を行い、環境経済学分野トップの国際学会であるAssociation of Environmental and Resource Economists (AERE) Summer Conference 2023で口頭発表に採択され、研究プロジェクトの途中成果を公表できた。以上より、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに作成を進めてきた「同時代を生きる次の世代」に対する「公平選好」パラメータの推計論文を仕上げ、国際学術誌に投稿することで研究を推進する計画である。その際には、「同時代を生きる前の世代」に対する公平選好の分析も追加する。加えて、これらの選好の異質性についてもジェンダーや所得の観点より分析を行う。また、過去2年の間に、他世代に対する利他性に関するサーベイ実験研究が複数公刊されている。これらの分野の最新動向を確実に精査する。 なお、ここまでの研究対象を「まだ生まれていない将来世代」を対象とするところまで拡張する上では、将来世代の暮らす世界における技術・社会制度・自然環境についての想定が必要という課題に直面している。これへの対処として、第一に、調査対象者に将来世代の生活についての「主観的信念」を尋ねるという方法がありうる。第二に、将来的に社会実装されうるテクノロジーについてシナリオを用意しそれを前提に選好を調査するというアプローチがありうる。この双方に取り組むために、基礎的な情報を収集し、アンケート調査における調査票案を考案し、現実世界における技術動向を整理する。 さらに、世代間衡平性の理論の拡張を行い、サーベイ実験の結果として推定される係数の解釈の研究も推進する計画である。
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Research Products
(1 results)