2023 Fiscal Year Annual Research Report
Management Resource Acquisition Strategy for Wine Business Startups
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23H00851
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
深見 嘉明 東京理科大学, 経営学部国際デザイン経営学科, 准教授 (70599993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺本 直城 拓殖大学, 商学部, 准教授 (10755953)
中村 暁子 北海学園大学, 経営学部, 講師 (30847520)
福田 大年 札幌市立大学, デザイン学部, 講師 (50405700)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 国産ワイン / スタートアップ / 経営資源獲得 / ネットワーク / ファンコミュニティ / ディスコース / メーカーズディナー / 技能研修 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新規事業参入者(経営資源を持たざる者)がコミュニティの参加を通して、どのように経営資源を獲得・動員し、ビジネスを成立させていくのかについて、事業者が直面する現実や構成した現実に関するディスコースを分析し、そのプロセスを検討するものである。本研究課題では、北海道ワイン産業への新規参入者を対象にしたフィールドワークを計画し、北海道仁木町・余市町・東川町の以下の事業者に対してフィールドワーク取材、ならびにインタビュー調査を実施した。 調査実施ワイン生産事業者: 仁木町; ドメーヌ・ブレス、ドメーヌ・イチ/自然農園、仁木産業振興社、vineyard Landscape)、 余市町; 平川ワイナリー、Yoka Winery、Misono Vinyard、東川町; 雪川醸造、東川ぺりかん 新規参入事業者の多くは地域において先に参入している事業者における研修を経験し、またノウハウ等の共有を受けていた。調査対象事業者は、申請時の計画では「創業ないし事業継承から3年以内のワイン事業者」としていたが、新規参入者に対し経営資源を提供する先輩の事業者へと調査対象を拡大した。また個人ないしは家族数人という組織形態をとる新規参入者が多いことから年間の生産数量が僅少であり、販路が少数の酒販店と料飲店に制限される。そのため、特定の料飲店との関係構築の上で生産者自らが製品を振る舞う「メーカーズディナー」と呼ばれる販促活動が、ブランディングと継続購入に至る顧客獲得に対する重要な施策であることが判明した。そのため以下の料飲店、ならびに国産ワイン愛好家に対するフィールドワーク、インタビュー取材もあわせて実施している。 調査実施料飲店: ワインビストロ カタバミ(小樽市)、hatake no naka(小樽市) 多角的にフィールドワークを実施し、その経過を国際学会にて発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小規模ワイン事業者の多くはまず圃場を購入し、醸造用ぶどうを生育するところから事業をスタートさせる。ぶどう生育の圃場作業は春から秋にかけてが繁忙期であり、その間取材協力を受けることが難しいなど、フィールドワーク実施に対する障壁が判明した。 しかし、安定的に購入を見込むことのできる顧客獲得ならびに顧客との接点強化・ロイヤルティ育成が重要な課題であることが判明し、その構造理解のために飲食店やリードユーザー的存在の消費者に対する取材を実施することができている。そのため、年間を通じて継続的な調査、データ収集を行うことが可能となっている上に、北海道内と一大消費地である東京近郊とで分担してフィールドワークの実施が可能となった。 本研究は北海道と東京の二地域に所在する組織に所属する研究者のチームによって実施されているが、所在地域、また専門性による役割分担が明確になり、組織的な研究の遂行が可能となった。 このような状況を鑑み、研究の進捗は概ね順調であると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はインタビューや経営資料分析を中心としたディスコース分析、つまり定性的なアプローチを主に採用して調査分析を進めていく計画であった。しかし、多様なステークホルダーに対する調査実施により、多くのノウハウ、物理的な資源、優良顧客へのつながり形成に大きく寄与するキーパーソンが存在することが判明しつつある。先行参入者の中に、技能研修を受け入れたり、苗や耕作・醸造機器の優良な販売者を紹介したり、優良な酒販店・料飲店を紹介したり(時には一緒にメーカーズディナーに登壇したりする)するといった経営資源獲得の支援を担う事業者が存在する。最終消費者の中にも、有力な料飲店・酒販店を新規参入者に紹介したり、作業ボランティアの動員を担うキーパーソンが存在する。このような構造が見えてきたことにより、定量的なネットワーク解析が有効であると判断できる。 このような状況に対応するため、2024年度では定量分析、特に組織ネットワーク分析を専門とする研究者を分担者に追加して加えることを想定する。 また多くの新規参入者は、一人、もしくは少人数で構成される組織形態をとっている。これは、繁閑の差が大きいぶどう生育・醸造プロセスの特徴に対応するものだが、繁忙期の作業を消費者によって構成されるボランディアに依存している。そのため、生産者間のネットワークのみならず、消費者との関係性や、消費者間のネットワーク、つまりファンコミュニティの構造分析が重要であることが判明している。 これに対応すべく、消費者に対するディスコース分析とネットワーク分析を並行して進めることを計画している。
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