2023 Fiscal Year Annual Research Report
集合的効力感がDV抑制機能を果たす条件の解明:社会生態的な予防介入に向けて
Project/Area Number |
23H01031
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
相馬 敏彦 広島大学, 人間社会科学研究科(社)東千田, 准教授 (60412467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古村 健太郎 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (40781662)
橋本 剛明 東洋大学, 社会学部, 准教授 (80772102)
宮川 裕基 追手門学院大学, 心理学部, 講師 (40845921)
木村 幸生 日本赤十字広島看護大学, 看護学部, 講師 (70549112)
梁 庭昌 富山国際大学, 現代社会学部, 講師 (40909743)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 心的機能 / 親密な関係 / 暴力 / DV |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に3つの実証研究を行った。 第一に、親密関係の相手からの暴力(IPV)被害を第三者がどのように受け止め、非人間化によってその深刻さを軽視しているかどうかを検証した。友人や家族のIPV被害について見聞きしたことのある個人を対象とする調査データを分析した結果、IPVを「非暴力」とラベリングすることは、第三者による被害者の非人間化と正の相関をもったが、加害者の非人間化とは相関を示さなかった。この結果から、第三者はIPVに内在する加害リスクを無視する一方、被害者の人間性を奪うことで暴力を合理化している可能性が示唆された。従来から示されるように、加害者が被害者を非人間化することで暴力を正当化するだけでなく、第三者もまた被害者を非人間化しIPVをからかいや愛情表現として認識している可能性が示された。 第二に、親密な関係の当事者間での心的機能の把握の内容によって、その関係への依存性や離脱可能性に影響することを確認した。約8ヶ月の間隔をあけたオンライン・パネル調査の結果、相手から向けられる非人間化の内容によっては、それが関係満足度の判断上の相手への期待値を低めるだけでなく、逆に高めることがあることが示された。これらの影響は、相手からのIPV被害による影響とは独立しており、心的機能の捉え方が当事者の関係継続にとって独特な役割を果たすことが示された。 これらの成果を踏まえて、第三に、親密な関係の当事者計91組を対象とする経験サンプリング調査を実施した。そこでは、コミュニティによる集合的効力感や介入可能性だけでなく、暴力生起についての当事者から第三者への秘匿を測定し、それらと当事者間での相互作用に関するデータを取得した。 これらの成果の一部について、学会大会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り進めることに加えて、経験サンプリング調査の一部を先行実施したことで、親密な関係の相互作用に与える第三者の影響について指針を得ることができた。次年度以降の計画を効率的に進めることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進の方向として、ハイリスクな親密関係の当事者の心的機能を第三者がどのように推測し、推測した内容が当事者へのどのような介入行動に関連するのかを整理する。まず、経験サンプリング調査で得られたペアの時系列データの分析を実施する。そこでは、当事者間での相互作用のあり方が関係の継続性や関係評価に与える影響を確認する。心的機能の捉え方として非人間化のもつ効果についても検証する。その上で、第三者からの影響要因として、集合的効力感や介入可能性が、当事者間の相互作用や関係評価プロセスに与える影響を検証する。さらに、第三者による判断や介入可能性に影響を与える要因として、その信念や当事者のIPVの観察の程度を取り上げ、それが当事者に対する心的機能の推論に及ぼす影響を検証する。
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Research Products
(17 results)