2023 Fiscal Year Annual Research Report
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23H01069
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
尾高 悠志 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30700356)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 志村多様体 / K安定性 / コンパクト化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度に出版された前田洋太氏との共著論文は、複素数体上の代数多様体、特に偏極つきの高次元の複素数体上アーベル多様体や偏極付きのK3曲面(K3 surface)、正則シンプレクティック複素代数多様体(別称:ハイパーケーラー多様体、ただしそれは付随するケーラー計量をリーマン多様体の圏として考えたもの)のいわゆるモジュライ空間の構成の文脈で、大変よく現れるさまざまな志村多様体のコンパクト化に関わるものであった。その中でも特にその佐武-Baily-Borelコンパクト化の(非対数的な意味での)双有理的なクラス、そうした問題の核である標準因子の正値性について、特殊で鏡映的な保形形式の存在問題の応用をもたらすという類のものである。古典的な研究の背景のある話であって小平次元への応用などは多くの研究があったが、それを特異性をより気にしない形で再定式化するモンドエアル。論文の中では実際に多くのモジュライ空間の例について当てはまられることをBorcherds, 吉川氏などの構成された無限積型の保形形式の存在から帰結し、さまざまな代数幾何的なモジュライ空間の例と整合性がとれることも確認した。またそれらの研究のもう一方では、Tian-Yauやさまざまな重力インスタントンの例はあるとはいえ、従来にはあまり代数幾何的な面ないし存在問題の観点からは論じられることのほとんどなかった、非コンパクト代数多様体上の完備リッチ平坦なケーラー多様体、とそれを与える標準計量存在問題について解を与えると期待される、申請者が以前(2020年度)に導入した開K-準安定性(および開K-半安定性)とそれについての漸近挙動にまつわる理論面についての進展があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
出版された論文の数だけ見ると少なかったと言える。とはいえ、その一方で、まずこの出版論文の研究は実際には2021年度に行われるものであった。このように出版までに時差があることを考える必要がある。そのような観点から鑑みると、2023年度は、非コンパクトな正規擬射影的な複素代数多様体の上の開リッチ平坦ケーラー計量の存在や構成の問題についての理解の進展少々があり、とりわけ非アルキメデス的な扱いにつながるものであったために今後の当該テーマのさらに広いクラスへの代数多様体の上の理論の理解の進展につながる成果として理解できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は(直接的にこの科研費のことではないが)国際共同加速基金を用いたフランス・パリおよびアメリカ・バークレーへの中期滞在が予定されているため、その間接的な影響は期待される。それらによってもたらされる知見によって、当該基盤Bの研究テーマの核であるArakelov幾何学的な数論的Yau-Tian-Donaldson予想の進展について、そちらの国際共同研究で得られる解析的な成果の類似を辿るという形で良い形で間接的に影響されると期待される。その一方で枠組みの対数的な拡張や開多様体の場合への拡張も検討する予定である。
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