2023 Fiscal Year Annual Research Report
力学系に対する相空間全構造解析と分岐解析の統合による新たなアプローチ
Project/Area Number |
23H01089
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮路 智行 京都大学, 理学研究科, 准教授 (20613342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
國府 寛司 京都大学, 理学研究科, 教授 (50202057)
小川 知之 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (80211811)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 力学系 / 分岐 / Neimark-Sacker分岐 / 不変閉曲線 / 進行波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,数値分岐解析とダイナミクス全構造計算法の統合により,力学系に対する大域的解析の新手法の確立を目指す. [内部ダイナミクスの分岐を伴う不変集合のパラメータ追跡] Neimark--Sacker分岐によって分岐する不変閉曲線のパラメータ追跡に取り組んだ.友枝明保氏(関西大学)と岡本和也氏(早稲田大学)との共同研究により,交通流を記述する遅延差分方程式モデルを提案・解析し,共著論文として発表した.交通流モデルに要求される一様流と渋滞の双安定性をもち,時間・空間ともに離散的な新しいマクロモデルの提案自体の意義に加え,本研究課題における対象としての意義もある.そのモデルではNeimark--Sacker分岐によって一様流が不安定化して不変閉曲線に対応する進行波解が分岐することが示唆される.この進行波解の数値的追跡に成功した.準周期不変閉曲線に対するparameterization methodによる数値解法の一種だが,系の対称性を利用して変数を大幅に削減しうるならば,非常に有効である.一方,進行波解が分岐することについて一般的な枠組みでの定式化・数学的な証明を試みているが,分岐理論を直接適用する際の技術的な問題が判明し,証明にはさらなる検討が必要である.現時点までの成果を2024年3月の日本数学会で発表した. [結合振動子系の大域的フィードバック制御等への応用展開] 非局所的結合振動子系におけるキメラ状態の発達度とリミットサイクルの特性の関係に関する数値実験について日本数学会秋季総合分科会で発表した.また,slow-fast系におけるリミットサイクルの分岐構造について問題点を整理している. 2024年2月16日に明治大学中野キャンパスで研究集会を開催し,力学系の分岐や大域構造,制御に関連するトピックについて参加者と議論した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高次元力学系における不変閉曲線の数値的追跡に成功している.ただし,数値分岐解析からのアプローチであり,対象はむしろ内部ダイナミクスが変化しない例であると考えられる.一方,一般的な定式化を通じて,より低次元の離散時間力学系で例を作ることができるため,全構造計算法からのアプローチに役立てることができる. また,非局所結合振動子系におけるキメラ状態の特徴づけおよび制御原理の考察など応用展開に向けた研究も進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
[内部ダイナミクスの分岐を伴う不変集合のパラメータ追跡] 離散時間力学系におけるNeimark--Sacker分岐に伴う不変閉曲線のパラメータ追跡を数値分岐解析とダイナミクス全構造計算法の両面から研究する予定である.また,常微分方程式で定義される連続時間力学系における不変トーラスの追跡にも進みたい.これによって,[Conley--Morseグラフから見た分岐理論]への知見を蓄える. [結合振動子系の大域的フィードバック制御等への応用展開]引き続きslow-fast系におけるリミットサイクルの分岐構造について議論を継続し,分岐枝のreconnectionを引き起こすメカニズムの解明に迫りたい. 国内外の研究者との研究議論によって研究を加速させるため,国内外の研究集会への参加や国内での研究集会開催を計画する.
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