2023 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of thermalization as a nonlinear response
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23H01094
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
押川 正毅 東京大学, 物性研究所, 教授 (50262043)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 線形応答 / 非線形応答 / 共形場理論 / 有限サイズスケーリング / 熱平衡化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の準備として、境界を持つ1次元量子多体系のエネルギースペクトルに対する有限サイズ補正について系統的な研究を行った。系が共形場理論で記述される場合、漸近的にはエネルギースペクトルは演算子の共形次元で与えられるが、有限系ではこれに様々な補正が加わる。これは、数値データを解析する上で非常に重要である。特に、密度行列繰り込み群(DMRG)は1次元量子多体系に対する強力な計算手法であるが、一般に、開放境界条件において精度が向上する。しかし、共形場理論の観点からは、開放境界条件ではバルクにおける摂動と境界における摂動が共存するため、それらの影響をあわせて解析する必要がある。本研究では、両者を含めた系統的な解析を行い、一般的な表式を得た。一般にエネルギー固有値には系の長さの2乗に反比例する補正が生じるが、これは境界におけるエネルギー・運動量テンソルの摂動によるものと同定できる。これは系の有効長の繰り込みを考えることによって吸収できる。さらに、共形場理論に基づく摂動論によって得られた解析的な表式を横磁場イジング鎖の厳密解や3状態ポッツ鎖のDMRGによる数値解と比較し、その正しさを検証した。特に、横磁場イジング鎖の境界における磁場の効果について、非自明な表式が摂動論と厳密解の間で一致をみた。 また、反ユニタリな対称性を持つ1次元量子多体系におけるエネルギースペクトルへの一般的な制約を導いた。 さらに、本研究の主題である熱平衡化に関して、まず線形応答理論の範囲内で有効的に熱平衡化が起きる条件を明確にし、これまでの電気伝導についての研究との関係を整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は非線形応答であるが、線形応答理論の範囲でも熱平衡化に関連する興味深い知見が見出された。また、境界のある系の有限サイズスケーリングに関して一般的な表式を得ることができた。これは今後の研究における数値データの解析に有用である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、2023年度に得られた成果を論文にまとめる。 さらに、線形応答理論で得られた知見をもとに、非線形応答に議論を拡張する。特に、周波数空間の一部におけるデータの解析に有用な、単純な周波数和則にかわる非線形伝導度に関する不等式を導出する。これを検証するために、2023年度に開発した共形場理論の摂動論を応用する。また、DMRGの数値データに基づく有限サイズスケーリングの手法を、熱平衡化を含むダイナミクスの問題に展開する。
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