2023 Fiscal Year Annual Research Report
多次元磁場空間エントロピー測定による新奇量子現象の解明
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23H01128
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
橘高 俊一郎 中央大学, 理工学部, 准教授 (80579805)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | エントロピー / 磁気熱量効果 / 量子臨界性 / 超伝導 / 磁場回転 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、磁場の方位まで精密制御した極低温熱物性測定(主にエントロピー測定)から多次元磁場空間に内在する新奇量子現象の普遍性や特殊性を明らかにして、その発現メカニズムに迫ることを目指している。初年度は、自作の熱量計を用いて主に擬カゴメ近藤格子を有するCeIrSnとCeRhSnの磁場角度分解熱物性測定を0.1 Kの極低温まで行った。その結果、以下のような研究成果を得た。 第一に、エントロピーに関する熱力学的関係式から量子臨界点で発散する「回転磁気グリューナイゼン比」という物理量を新たに定義した。さらに、回転磁気グリューナイゼン比を回転磁気熱量効果から直接評価できることを明らかにした。 第二に、非フェルミ液体的挙動を示す擬カゴメ近藤格子CeIrSnとCeRhSnについて磁場角度分解比熱・エントロピー測定を行い、両物質のエントロピーが顕著な磁場角度依存性を示すことを明らかにした。 第三に、CeRhSnとCeIrSnにおいて回転磁気グリューナイゼン比を精密に評価し、様々な磁場や温度での測定結果が一つの関数にスケールすることを見出した。 以上の研究成果により、回転磁気グリューナイゼン比という量子臨界現象を特徴づける新たな指標を提案することができた。本実験アプローチはエントロピーが磁場方位に顕著に依存する異方的な量子臨界現象の研究に特に有効であり、今後の更なる発展が期待できる。現在は、理論模型に基づく考察に取り組んでおり、論文投稿の準備を進めている最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CeIrSnとCeRhSnにおける回転磁気熱量効果の測定から回転磁気グリューナイゼン比という新しい物理量が量子臨界現象の研究に有用であることを実証できた。同様の測定を様々な系に対して行うことで更なる研究発展が見込まれており、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは昨年度に得られた研究成果を論文にまとめて公表する。さらに様々な物質の磁場角度分解熱物性測定を行い、新たな知見を獲得する。例えば、YbCo2Zn20における磁場誘起相転移の研究を計画している。
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