2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23H01130
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
池田 浩章 立命館大学, 理工学部, 教授 (90311737)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 通人 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10596547)
星野 晋太郎 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (90748394)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 物性理論 / 第一原理計算 / 重い電子系 / 超伝導 / 多極子 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度については,これまでに開発したLDA+DMFT,LDA+FLEXのオリジナルコードの改良を行うとともに,wien2kに実装されているhybrid functional法およびLDA+U法とecaljに実装されているQSGW法による計算結果の違いについて,鉄系超伝導体であるFeSeおよびKFe2As2を対象としてバンド構造およびフェルミ面の比較を行った。フェルミ面の枚数については,hybrid functional法やQSGW法で実験結果に整合する結果を得ることができたが,フェルミ面サイズについては強相関効果が必須であること,FeSeの方がKFe2As2よりも非局所的な相互作用効果が重要であることが分かった。 また,重い電子系化合物に見られる多極子秩序について再考するため,多極子自由度の表現と相性のよい局在原子軌道に基づく考察を行った。この研究から,近年注目されている電気トロイダル多極子が電荷・スピン・電流密度といった基本的な物理量では捉え切れないこと,そして電子系の自由度を完全に表現するためには,ミクロな物理量としてスピン由来の電気分極や電子カイラリティ密度という物理量がこれまで見逃されてきたことが明らかとなった。その成果はPhysical Review Letterに出版され,Editors' suggestionに選ばれた。 さらに,オリジナルコードおよびQuantum Espressoの双方に基づいてスピン由来の電気分極および電子カイラリティ密度を計算し,単体テルルのようなカイラル物質おいてはカイラリティ密度の単位胞内での積分値が有限に残ること,そして,フェロアキシャル物質において,カイラリティの双極子分布が得られることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予期せず,電子カイラリティ密度の研究が進んだため,LDA+DMFT,LDA+FLEXのオリジナルコードの改良については思ったほどの進展は得られなかった。しかし,これまで見逃されてきた電子カイラリティ密度に関連するスピン由来の電気分極の存在や電子カイラリティ双極子分布の定量評価は今後の研究の新機軸となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
LDA+DMFT,LDA+FLEXのオリジナルコードの改良を行うとともに,Ce系,U系化合物への適用結果を実験事実と比較する。特に,パラメータフリーなLDA+Uコードのベンチマークテストとして,CeRu2Si2の結果を実験結果と比較する。また,LDA+FLEXをFeSeに適用し,鉄系超伝導体を始めとする量子臨界点付近の物質で度々問題となるフェルミ面サイズの問題に関して一石を投じたい。さらに,電子カイラリティ密度が有限に存在する様々なカイラル物質・フェロアキシャル物質において,カイラリティモノポールやカイラリティダイポールの定量評価を行い,どのような物質において大きな値を取りうるかについて明らかにすることで新規物質開拓の糧とする。
|