2023 Fiscal Year Annual Research Report
冷却原子実験を用いた空間異方性を持つ三角格子反強磁性モデルの研究
Project/Area Number |
23H01133
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
福原 武 国立研究開発法人理化学研究所, 量子コンピュータ研究センター, チームリーダー (30742431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 大輔 日本大学, 文理学部, 准教授 (80603505)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | フラストレートXY模型 / 光格子 / 冷却原子 / 量子シミュレーション / フロケ制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、まず反強磁性相互作用をする三角格子XY模型におけるフラストレーションの研究を行った。ボース・アインシュタイン凝縮(BEC)を三角光格子に導入し、各格子のBECの位相をスピンとみなすことでXYスピン模型が実現される。三角格子中のBECに対し光格子の位相変調(フロケ制御)を行い、スピン間結合の符号を変えることで、フラストレートのない状況からある状況へと変化させることができる。この変化を早く行った際の非平衡ダイナミクス(緩和と励起)を調べた。比較的に早く変化させた際に、カイラルモードのドメイン構造が形成されることを観測した。 本研究のメインターゲットとなるスピン1/2ハイゼンベルク模型(XXZ模型)の実装には、ルビジウム-85原子のフェッシュバッハ共鳴を用いる。このフェッシュバッハ共鳴は155ガウスという比較的大きな磁場にあるため、磁場コイルの水冷の準備を行った。また、マイクロ波による原子の内部状態の制御に関して、それまでのルビジウム-87原子用の6.8GHzのものに加えて、ルビジウム-85原子用の3.1GHzのマイクロ波ホーンアンテナを導入した。これにより反強磁性XXZ模型研究のため必要となる、ルビジウム-85原子の実験の準備が整った。 理論研究では、従来の運動自由度に関連するエントロピー制御とは異なる、スピン自由度を活用した原子気体の冷却方法を検討した。スピン成分数の多い原子に対してスピン依存する外場を印加することで、システムを多成分から成るエントロピー溜まりと、強相関電子系を模倣するための2成分のみの量子シミュレータ部分に分割する。イッテルビウム-173原子を想定した6成分系を例とし、大規模な数値計算によってこの冷却プロトコルの有効性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スピン1/2ハイゼンベルク模型(XXZ模型)で記述される物理系の実現に向けては、ルビジウム-85原子の準備が予定通り進んだ。また、技術面においても原子を捕獲するための光トラップ用レーザー光の輸送に光ファイバーを用いることでシステムの安定度を高めることにも成功した。 一方で、光格子への導入時に加熱が存在することが明らかになり、早期にこれに対処する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
光格子中の冷却原子を用いてスピン1/2ハイゼンベルク模型を実装するためには、十分に低温のサンプルを準備する必要がある。光格子への導入時に加熱が存在することが分かったため、これに対処する。具体的には、光格子への導入時のトラップビームの配置やシークエンスを最適化することを計画している。また、ルビジウム-85原子の実験においてはフェッシュバッハ共鳴共鳴を活用することでボース・アインシュタイン凝縮体の生成を目指す。更に、光格子に断熱的に導入することで各格子点に1個ずつ原子が詰まったモット絶縁体状態を実現させる。 理論研究としては、昨年度の成果を論文出版するとともに、実験側でのフロケ制御を用いたフラストレートBose-Hubbard模型の実現を受けて、この系を応用することで実現可能な新たな興味深い量子多体現象の開拓を行う。例として、光格子の高速振動に加えて相互作用の大きさの高速振動を同時に行うことで実現できる有効模型に対し、理論的な基底状態相図の解明と、実験的な実現に向けたプロトコルの検討・提案を行う。
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