2023 Fiscal Year Annual Research Report
Fundamental research and application by spectroscopic evaluation of terahertz-band universal excitations of disordered systems
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23H01139
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
森 龍也 筑波大学, 数理物質系, 助教 (30598074)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ガラス / 振動励起 / テラヘルツ光 / ボゾンピーク / フラクタルダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
ガラスのTHz帯普遍的励起であるボゾンピークの起源の理解のために、不均一弾性体理論に基づくコヒーレントポテンシャル近似を様々なガラスに対し適用し、ガラスのナノスケール機械特性の抽出を行った。ボゾンピークの周波数と強度を、ナノ力学特性と結びつける2つの因子の定量的な抽出と解析に成功した。ボゾンピークの決定因子の一つである粗視化波長とガラス構造の関係を調べたところ、ガラスの構造因子と粗視化波長に強い相関を持つ特性が存在することを明らかにした。 また、振動状態密度に現れるボゾンピークをテラヘルツ分光で検出した際に解析で必要となるテラヘルツ光とボゾンピークの相互作用の理解のために、新しい相互作用に関するモデルを構築中である。新しいモデルにより、従来モデルで説明できなかったテラヘルツ帯の赤外吸収の振る舞いに対し、定量的な再現を含む新しい理解を与える。このモデルに関連し、モデル構築が成功した場合に可能となるテラヘルツ分光によるボゾンピーク検出の応用を目的として、テラヘルツ光を用いてガラスの熱伝導率を決定する手法について特許出願を行った。 また、大規模分子動力学シミュレーションによる振動状態密度と赤外吸収係数の計算を行うことにより、現実物質のガラスのボゾンピークスペクトルを再現することに成功した。これにより、ボゾンピークモードの微視的振る舞いとその起源、および赤外吸収の微視的振る舞いの検討を行う基盤を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,当初の研究計画に沿って概ね順調に進めることができたと考えている。予定していたガラスのナノ力学特性をボゾンピークスペクトルから抽出することに成功しており、成果を論文にまとめ投稿中である。また、現実物質に対する大規模分子動力学計算によるボゾンピークスペクトルの再現も目途が立ちつつあり、これによりボゾンピークの微視的起源の検討が可能になる。また、テラヘルツ光とボゾンピークの相互作用に関する新しいモデル提案にも着手することができ、その原理を用いたテラヘルツ光の新しい応用について特許出願を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ガラスのボゾンピークスペクトル解析から得られたナノ力学特性の情報を基に、ボゾンピークの起源と関連する現象の定量的な理解を進める。また、異常結晶において発現するガラス的熱物性の起源とガラスのボゾンピークのモデルの比較を行う。大規模分子動力学シミュレーションにより、酸化物ガラスのボゾンピークと吸収係数のスペクトルを得て、テラヘルツ帯赤外吸収の微視的起源を探る。また、テラヘルツ光とボゾンピークの相互作用に関して提案する新しいモデルとシミュレーションの結果を調べることにより、提案モデルの微視的妥当性を調べる。
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Research Products
(23 results)