2023 Fiscal Year Annual Research Report
Slow Arrhenius process in glass forming materials
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23H01145
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
深尾 浩次 立命館大学, 理工学部, 教授 (50189908)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 遅いアレニウス過程 / エージング / 体積緩和 / 誘電緩和測定 / 電気容量測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は研究目的達成のために研究を遂行し、以下の3項目の研究実績が得られた。 1) 液体状態の遅いダイナミクスの可視化のために、P2VPとナノ粒子OAPS系のナノコンポジットのダイナミクスを誘電緩和測定により調べた。ナノ粒子としては、OAPSを基本とし、その分子間相互作用をコントロールしたナノ粒子系を用い、遅い過程のダイナミクスの分子間相互作用依存性を明らかにした。その結果、分子間相互作用の低下とともに、ガラス転移温度が低下すること、および、ダイナミクスがfragileからstrongへと変化することがわかった。 2) ポリ4ブチルスチレンを対象として、ガラス転移温度以上のダイナミクスを誘電緩和測定で、ガラス転移温度以下でのエージングダイナミクスとして体積緩和を電気容量測定を通して調べた。その結果、液体状態での遅いアレニウス過程の緩和時間とガラス状態での体積緩和の緩和時間が分散地図上で同一の直線上に存在することが実験的に明らかとなった。これより、遅い過程と体積緩和過程が同一のダイナミクスで支配されることが示された。 3) 拘束系のダイナミクスに関連して、細孔内に拘束されたイオン液晶の相転移、ダイナミクス、構造変化を熱量測定、誘電測定、X線回折測定を通して、明らかにし、その成果をJ. Chem. Phys.誌に発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
誘電緩和と体積緩和の2つの測定の組み合わせが上手くマッチし、当初の予定通りの結果が得られた。また、拘束系のダイナミクスに関して、ナノ細孔内でのイオン液晶の相転移とダイナミクスに関する研究成果をまとめた学術論文をJ.Chem.Phys誌に掲載することができた。以上より、本申請研究は、概ね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はポリ4ブチルスチレン以外に、ポリ4メチルスチレン、ポリ4ブテニルスチレンを対象として、液体状態での遅い過程の探索とガラス状態でのエージングダイナミクスを誘電緩和測定、体積緩和測定を組み合わせて調べていく。これらの研究を総括して、遅いアレニウス過程の本質を明らかにするとともに、ガラス状態の一義的な記述を目指して検討を進めていきたい。
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