2023 Fiscal Year Annual Research Report
素粒子標準模型を超える物理探索に向けた格子QCD精密化
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23H01195
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山崎 剛 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (00511437)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藏増 嘉伸 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (30280506)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 素粒子理論 / 格子QCD |
Outline of Annual Research Achievements |
素粒子物理学における喫緊の課題である、標準模型を超える未知の物理探索に関する理論的不定性を削減するための研究を行った。未知の物理現象探索のための理論計算には、強い相互作用の効果による不定性が存在している。この不定性を削減する計算方法として、強い相互作用の第一原理計算が可能な格子QCDに期待が寄せられているが、まだ十分な精度での計算を実行することは容易ではない。 本課題では、世界初となる現実的クォーク質量かつ巨大体積でゲージ配位(PACS10配位)を異なる格子間隔3点で生成し、それを用いた格子QCD精密計算により、強い相互作用効果の理論的不定性の削減を目指す。2023年度は、標準模型を超える物理の間接的探索に関係する、K中間子セミレプトニック崩壊形状因子の精密計算を実施した。2022年度までに計算が完了した格子間隔の大きな2点の計算結果に、さらに格子間隔を小さくした計算結果を加えた解析の中間結果から、統計誤差0.3%程度という高精度形状因子決定が行えた。その他にも、ニュートリノ実験で重要となる核子軸性ベクトル形状因子とそれに関係する種々の核子形状因子の精密計算を実施した。さらに、ハドロン構造と密接に関係する荷電半径を高精度に求める計算方法の研究に取り組み、その方法を用いたパイ中間子とK中間子の荷電半径の高精度計算を開始した。 これらの研究成果は、毎年開催されるLattice国際会議やその他の国際会議、国内研究会で発表し、国際会議報告や学術雑誌Physical Review Dで報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のようにK中間子セミレプトニック崩壊形状因子計算、および核子形状因子計算、中間子荷電半径計算は順調に進んでおり、今後も着実な進展が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
K中間子セミレプトニック崩壊形状因子計算は、全ての格子間隔3点の計算結果を用いた現在の解析結果を論文として取りまとめ、学術雑誌へ投稿する計画である。その後、これまでの計算には含まれていなかったチャームクォーク真空偏極効果を取り入れた計算を実施し、その系統誤差の大きさを議論する。 核子形状因子計算については、最も小さい格子間隔のPACS10配位を用いた計算を継続し、各形状因子について連続極限での値を見積もることが今後の目標となる。 中間子荷電半径計算は、最も大きな格子間隔のPACS10配位を用いて、新しい計算方法を用いることで、従来の計算方法と比較し、どの程度の高精度計算が実現可能かを調査することが今後の目標の一つである。
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Remarks |
佐々木勝一(課題代表)、第10回HPCI利用研究課題優秀成果賞受賞、2023年10月 山崎剛、2023年度筑波大学BEST FACULTY MEMBER受賞
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