2023 Fiscal Year Annual Research Report
南極深海サンゴによる産業革命以降の周極深層水変動の復元
Project/Area Number |
23H01258
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tottori University of Environmental Studies |
Principal Investigator |
徳田 悠希 公立鳥取環境大学, 環境学部, 准教授 (30779765)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千徳 明日香 琉球大学, 理学部, 助教 (00722802)
板木 拓也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (30509724)
菅沼 悠介 国立極地研究所, 先端研究推進系, 教授 (70431898)
藤井 昌和 国立極地研究所, 先端研究推進系, 助教 (80780486)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 南極 / イシサンゴ / 氷床融解 / 南極周極深層水 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在,南極氷床の急激な質量損失が問題となっている.この原因として注目されているのが,氷床末端での暖かい南極周極深層水の流入による棚氷底面の融解である.このCDWの変動史は,現在の南極氷床の質量損失傾向が,産業革命以降の人為起源の地球温暖化現象の顕在化なのか,それとも自然変動のゆらぎに過ぎないのかを判断する上で欠かせない情報である.しかし,南極氷床の大部分を占める東南極氷床域では,過去数百年間のCDWの流入状況やその変動が,ほとんど明らかになっていない.そこで本研究では,東南極沿岸のリュツォホルム湾から採集された長寿のイシサンゴを用い,その骨格に記録された過去数百年間のCDW変動を詳細に解読する.本年度は第65次南極地域観測隊に研究代表者(徳田)が参加し,砕氷船しらせを用いて,東南極リュツォホルム湾およびトッテン氷河沖の計9地点でROV観測とビームトロール観測を実施した.その結果,古環境解析を実施可能な多数のサンゴ類の採集に成功し,次年度の研究計画を十分に実施できる状況が整った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した,南極におけるサンゴ採集が順調に実施でき,多くのサンゴ類を採集できた.
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Strategy for Future Research Activity |
南極海に数多く生息し,連続的な付加成長により骨格成長の履歴を詳細に解析可能な単体性イシサンゴに着目し成長線解析を行う.Tokuda and Ezaki (2020)で培った手法をもとに,サンゴ骨格の最大成長方向に沿って,骨格の基部から末端部に至る断面を作成し,走査型電子顕微鏡を用いて骨格成長線をμmからmmオーダーで網羅的に解析する.それにより年輪に相当する可能性のある骨格成長線を認定する.この骨格断面に対し,骨格微量元素の高精度なマッピングが可能な蛍光X線分析をSpring-8にて行う.特に南極では白夜や極夜などもあり,海洋の一次生産量が季節変化することで,サンゴの餌資源の量や質が周期的に大きく変わることを念頭に,骨格内の有機物にその濃度が依存するPやS,骨格内での含有量が骨格成長速度(餌が多ければ骨格は早く成長する)に規定されるSrの周期的な増減を調べる.それにより,様々な周期の成長線の中から年輪を特定する.
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