2023 Fiscal Year Annual Research Report
火山活動の規模と履歴の解読―海底テフラからのアプローチ
Project/Area Number |
23H01281
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
羽生 毅 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), グループリーダー (50359197)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 えりか 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 助教 (00972366)
清水 健二 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (30420491)
石塚 治 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 首席研究員 (90356444)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 海域火山 / テフラ / 化学分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、海域にある火山が活動してから現在に至るまでの噴火様式やマグマ生成過程の変化を解明することである。そのために火山周辺の海域で海底に堆積したテフラの採取と化学分析を行った。 海底テフラの採取に関しては、11月に海洋研究開発機構の海底広域研究船かいめいによる航海において、三宅島東方沖でピストンコアによる採泥を行った。島からの距離や方位の異なる4地点でピストンコアを実施したところ、島に近接した場所では斜面上を流下したテフラが堆積し層準が乱されていたが、島からやや離れた場所では時系列を保持した良好なコア試料を採取することに成功した。このコアには三宅島起源と思われる複数の暗色テフラ層が含まれているとともに、新島もしくは神津島で9世紀に噴出した白色テフラ層が含まれていたため、千年強の期間の三宅島の噴出物を追うことができる。本年度は採取したコアに対して、岩石学的記載を行った。 一方、鬼界カルデラを対象とした研究では、既存コア試料の化学分析と結果のとりまとめを行った。ちきゅうSCOREプログラムで鬼界カルデラ外側から得られた試料の化学分析と有孔虫を用いた年代測定から、9.5万年前のカルデラ噴火とその次の7.3千年前のカルデラ噴火へ向けたマグマ進化が明らかになった。この成果を論文投稿した。また、海底着座式掘削装置によりカルデラ壁上及びカルデラ外側で採取した溶岩及び火山灰試料の化学分析を実施した。特に、カルデラ壁を構成する岩盤が、カルデラ形成以前の安山岩質の古い火山体に由来することが判明した。これらの作業と並行して、カルデラ噴火に伴う噴出物に関する既存のデータのコンパイルを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度に計画していた項目はおおむね実施することができた。三宅島東方沖で実施したピストンコアによる採泥では、調査に適した場所の選定に関する知見が得られた。それを踏まえて、火山噴火の時系列を保持した良好なコア試料が得られたことから、翌年度に行う研究への足掛かりができた。採取されたコア試料に対して本年度は記載するところまで予定通り完了し、翌年度に行う化学分析へと進展させることができる。 鬼界カルデラを対象とした研究においても、順調に化学分析等が進んでいる。本研究ではテフラ試料に含まれる微小なガラス及び鉱物の分析をするため局所化学分析を行っているが、試料の研磨作業、二次イオン質量分析計による揮発性成分分析、電子線プローブによる主成分分析、レーザーアブレーション誘導プラズマ質量分析による主成分、微量成分分析といった一連の試料準備と分析作業を問題なく行うことができることを確認できた。その結果、多数の化学分析を実施できている。このように一連の分析技術は確立できているので、翌年度に行う鬼界カルデラのメルト包有物や三宅島のテフラ試料の化学分析も進展すると考えられる。また、分析の進んでいた項目については結果をまとめ論文を作成して投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
翌年度は化学分析を進めることが中心となる。鬼界カルデラの試料に対しては、テフラに含まれる火山ガラスや鉱物の局所化学分析を継続するのに加えて、鉱物に含まれるメルト包有物の分析を進める。今年度予察的に行ったメルト包有物の分析から、マグマだまりの持つ火山ガス成分量やマグマの深度の情報が得られ、マグマだまりの成長過程を追うことができることが分かった。そこで、翌年度はメルト包有物分析を本格的に始める。メルト包有物に関しては試料数が膨大となるので、今年度も行ったように研究代表者、分担者でそれぞれが担当する分析を効率よく受け渡していき分析のスループットを向上させる。メルト包有物から得られるマグマだまりの進化過程に関する知見を得たうえで、学会発表や論文として成果を公表していく。 三宅島沖海底から採取されたテフラ試料についても、上記のようなスキームで分析を進める。翌年度は火山ガラスや鉱物を対象とし、翌々年度はその中のメルト包有物を対象として研究を発展させていく。また、年代軸を入れるためにコアに含まれる有孔虫を用いた年代測定や、ドレッジ等で得られた古い岩石に対してはAr/Ar年代測定を行う。また、翌年度末にも航海を計画しており、その中でさらなるピストンコア採泥調査を計画する。今年度の航海で行ったピストンコアに関する経験や、これまでに得た堆積構造のデータを組み合わせて、最適な調査地点の選定を行う。このようにして得られたコア試料は、翌々年度に分析を実施する予定である。
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[Presentation] Evolution of magma supply system beneath a submarine lava dome after the 7.3-ka caldera-forming Kikai-Akahoya eruption2024
Author(s)
Morihisa Hamada, Takeshi Hanyu, Iona M. McIntosh, Maria Luisa G. Tejada, Qing Chang, Katsuya Kaneko, Jun-Ichi Kimura, Koji Kiyosugi, Takashi Miyazaki, Reina Nakaoka, Kimihiro Nishimura, Tomoki Sato, Nobukazu Seama, Keiko Suzuki-Kamata, Satoru Tanaka, Yoshiyuki Tatsumi, Kenta Ueki, Bagdan S. Vaglarov, Kenta Yoshida
Organizer
Submarine caldera volcanoes -The cutting edge of our understanding achieved by various approaches-
Int'l Joint Research
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[Presentation] Isotopes and trace element constraints on magma sources and variability at Kikai Caldera, SW Japan2023
Author(s)
M. L. G. Tejada, T. Hanyu, T. Miyazaki, M. Hamada, T. Sato, N. Seama, K. Kaneko, R. Nakaoka, K. Kiyosugi, K. Suzuki-Kamata, O. Ishizuka, I.Mcintosh, K.Ueki, S.B.Vaglarov, Q.Chang
Organizer
日本火山学会2023年秋季大会
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