2023 Fiscal Year Annual Research Report
球菌状シアノバクテリアによるペロイド形成過程の一般性評価
Project/Area Number |
23H01289
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
白石 史人 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (30626908)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 奈津子 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (40608759)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ペロイド / 微生物炭酸塩 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,球状シアノバクテリアによるペロイド形成過程がどの程度一般的であるかを理解するため,3つの課題を設定して検討を行った. 1つ目の課題であるペロイド形成過程の解明に関しては,まず球状シアノバクテリアであるChroococcidium, Myxosarcina, Synechocystisを培養した.これらのうち,十分に生育したSynechocystisを用いて石灰化実験を行ったところ,菱面体の方解石と考えられる鉱物に加えて,球形のペロイドのような鉱物も形成された.そこでこの実験回収試料を樹脂に包埋し,ミクロトームによる面出しを行った.この試料は次年度に集束イオンビーム加工に用いる予定である.また,培養したSynechocystisの透過型電子顕微鏡観察も実施し,細胞の形態的特徴を把握した.さらには,StanieriaとMicrocystisの培養も開始した. 2つ目の課題である現世環境のペロイドに関しては,大分県長湯温泉において野外調査を実施し,採集した試料から薄片を作成して観察したところ,ペロイドを発見した.このペロイドから集束イオンビーム加工によって薄膜試料を作成し,走査型透過X線顕微鏡と透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ,ペロイド内部は直径数100 nmの等粒状アラゴナイトからなり,一部は幅数10 nmの縮れた紐のような産状を示した.これは細胞外高分子表面に集積した非晶質炭酸カルシウムが結晶化したものと推測される. 3つ目の課題である地質時代のペロイドに関しては,愛媛県のジュラ系~白亜系今井谷層群の石灰岩を調査し,岩体の中部層準にペロイドから構成されるスロンボライトが多く産出することを明らかにした.またインドの中原生界チットラクート層の炭酸塩岩の検討も行い,珪化部から保存の良い球状バクテリアの微化石を含むペロイドを発見した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた3つの課題とも,ある程度計画通りに進行している.またインドのチットラクート層からは,予想外に保存の良い球状バクテリアを発見することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も,引き続き3つの課題に取り組む. 1つ目の課題に関しては,石灰化したSynechocystisを集束イオンビーム加工し,走査型透過X線顕微鏡と透過型電子顕微鏡を用いて観察する.また,StanieriaとMicrocystisの培養を継続し,十分に生育した株を用いて石灰化実験を行い,その回収試料の観察も行う. 2つ目の課題に関しては,大分県長湯温泉のペロイドから得られた結果を考察し,ペロイドの形成過程に関する論文の執筆を開始する. 3つ目の課題に関しては,今井谷層群とチットラクート層などから得られたペロイドの検討を継続し,保存の良い試料から集束イオンビーム加工薄膜を作成して内部構造を観察する.
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