2023 Fiscal Year Annual Research Report
人工相分離構造体による可逆性動的反応場の制御と分子論的理解
Project/Area Number |
23H01336
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
馬渕 拓哉 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (10795610)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 粗視化分子シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、分子動力学(molecular dynamics: MD)を用いて実験的に困難である相分離構造体内の動的領域を可視化することで、同内分子の分布および流動性と機能性との相関を系統的に評価する。MD法には複数のモデルが存在し、扱う対象の粒度に応じて再現可能な現象の時間的・空間的スケールが大きく異なる。相分離はμsオーダー以上の時間を要する現象のため、全原子MD法で再現することは困難である。そこで、複数の原子を1つの粗視化粒子として取り扱う上位の粗視化MD法を用いて相分離形成現象について解析を行う。当該年度は粗視化MD法による高次構造解析モデルを構築した。適切な相互作用パラメータが存在しない一部の分子においては、MARTINI力場パラメータの決定方法に則り、全原子MD計算で得られた結果を利用して自由エネルギーの観点からボトムアップ的に複数の原子を1つの粗視化粒子として取り扱う粗視化モデルを構築した。人工分子の自由エネルギーを全原子MD計算により取得し、その結果を基にMARTINI力場で予め定義されている複数の粗視化粒子モデルの中から一つを割り当てた。荷電分子など自由エネルギーを全原子MDの結果と一致させることが困難な場合は、全原子MD計算より動径分布関数などの構造情報に関する分布関数のデータを取得し、粗視化粒子の分布が一致するように粗視化ポテンシャルの繰り返し修正を行うIterative Boltzmann Inversion法を用いて相互作用パラメータを決定した。申請者は既に独自に改良した分極モデルをMARTINI力場に導入した実績があり、本研究提案でもそれらの知見を活用して粗視化モデルを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自由エネルギーが全原子MDと一致する粗視化モデルの構築に成功し、予定通り来年度以降に行う相分離構造形成現象を可視化するための準備が整ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で培った相分離構造の制御パラメータに関する知見を応用した人工相分離構造体を構築し、形成メカニズムの解明と流動性の制御に取り組む。
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