2023 Fiscal Year Annual Research Report
温度応答性バルブを用いた紙分析チップ内の流動と反応の精密制御による分析信頼性向上
Project/Area Number |
23H01384
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
岩崎 渉 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (20712508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 雄太 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (70574341)
森田 伸友 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (90807554)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 温度応答性樹脂 / 紙分析チップ / 流動制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
ペルチェ素子を個別に操作できるシステムを構築し、紙デバイスで4つの試薬の流動を制御するための紙デバイスのパターンを設計し、紙、ペルチェ素子等をを固定するための治具を作製した。この紙デバイスを用いて4種の試薬の流動制御試験を行った。試験では、緑、赤、黄、青の着色液を用いてそれぞれを順番に流れるように操作した。その結果、バルブの開閉操作に応じて着色液は流動を変化させ、想定通り順番に流れる様子を確認することができた。次に、この紙デバイスを用いて実際にたんぱく質を用いた分析を行った。たんぱく質の1種である免疫グロブリンG(IgG)を比色法により分析した。紙デバイスの反応部に抗体を固定化し、抗原、酵素標識抗体、洗浄液、呈色基質をバルブを利用して順番に流し、酵素と呈色気質の反応による色の変化を確認した。その結果たんぱく質の濃度に比例して色の強度が高くなった。また、たんぱく質の分析は比色法のみでなく電気化学的手法でも試みた。比色法と同様にデバイスの反応部に抗体を固定化し、抗原、酵素標識抗体、洗浄液、基質をバルブを利用して順番に流し、酵素と気質の反応により生成された電気化学的活性種を電気化学測定した。その結果、IgG濃度に応じて電流の変化が大きくなることを確認した。 一方で、実験を進める中で一度加熱したバルブは閉止機能をうまく発揮できない可能性があることがわかった。そこで新たにバルブが閉止機能ををうまく発揮できる条件を把握するため、異なる加熱時間と異なる加熱温度で一度バルブを加熱し、その後の閉止機能について評価した。その結果バルブが加熱冷却後に閉止機能を示すためには加熱温度と加熱時間に許容範囲があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インクジェットプリンタによる紙分析チップ作製を実現するために所有するインクジェットプリンタのアップデートを行い、位置合わせをしながら塗布することが可能となり、流路パターンに合わせて目的の場所に塗布することが可能となった。このインクジェットプリンタを用いた抗体の塗布は可能であり、バルブの塗布に関しては現在条件検討中である。インクジェットプリンタによるバルブの作製はまだ成功していないが、従来手法で作成したバルブを複数用いた生化学分析は実現しており、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度にアップデートしたインクジェットプリンタを用いて、引き続き温度応答性バルブを作製する手法を検討する。従来手法で作成したバルブを複数用いた生化学分析ではバルブサイズが大きいため長い分析時間が必要であったが、インクジェットプリンタで作製することにより短時間化や精度向上が期待できる。
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