2023 Fiscal Year Annual Research Report
超高感度溶液NMRに向けたランタノイド原子による動的核偏極の基盤創出
Project/Area Number |
23H01423
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
香川 晃徳 大阪大学, ヒューマン・メタバース疾患研究拠点, 特任准教授(常勤) (70533701)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 動的核偏極 / 核磁気共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
極低温で行う動的核偏極(DNP : Dynamic Nuclear Polarization)法は、電子スピンを利用して核スピンの向きを揃えることで、液体NMRやMRIの感度を飛躍的に向上できる。本研究では、g値の大きな電子スピンを持った粒子をDNPによる高感度化に利用することで、DNPの汎用性、利便性の高度化を実現する。 今年度は、ヘリウム循環によるサンプル冷却が可能な実験系を構築した。DNPに用いるマイクロ波のサンプルへの照射効率を向上させるために、球型のオーバーサイズ共振器を作製した。従来の円筒型と比較すると約1.5倍の核スピン偏極が得られた。またNMR用プローブのコイルホルダーをアルミナ製にすることによって、水素、フッ素、炭素などのバックグラウンド信号を除去することで、極低温下での偏極率評価が行えるDNP実験系を構築した。 フッ化カルシウムにツリウム原子をドープした単結晶を作製し、アニール処理によってツリウムをDNPに用いることができる3価に変化させた。単結晶サンプルの場合、1.7K下においてDNPによって38%のフッ素スピン偏極が得られた。また粒子化サンプル(20-75um)を用いた場合、電子スピン共鳴のスペクトルが広がることによって、DNP効率が低下したものの約14%のフッ素スピン偏極を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
極低温でDNPが行える実験系を構築し、超高感度化された10%を超える核スピン偏極を得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続き、装置、手法開発とサンプル作製を行い、本研究を推進する。 装置、手法開発では、マイクロ波掃引系を開発し、より高いDNPによる偏極移動効率を評価する。また二重共振回路を導入し、異なる核スピン間での偏極移動を目指す。極低温用冷凍器のDNP実験が可能時間を延ばせる実験条件を探索する。サンプル作製については、NMR応用へ行うために必要な粒子の微細化を行い、そのサンプルを用いてDNP偏極実験を行う。
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Research Products
(3 results)