2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23H01460
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
日暮 栄治 東北大学, 工学研究科, 教授 (60372405)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 魁 東北大学, 工学研究科, 助教 (20896716)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 表面活性化接合 / キャップ層 / 銀薄膜 / 表面粗さ |
Outline of Annual Research Achievements |
金属薄膜を用いたウェハ接合技術は、半導体デバイス、光デバイス、センサ・MEMSなど広範な分野で用いられている。金(Au)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)などの金属の中で、Agは最も低い電気抵抗率と最も高い熱伝導率を有するため、有望な接合材料の一つである。室温でウェハを接合できる表面活性化接合は広く用いられているが、従来のAg/Ag表面活性化接合では、接合強度は極めて低かった。これは、Ag薄膜の大きな表面粗さが原因と考えられる。Agは、凝集エネルギーが低く、大気雰囲気下でAg原子のマイグレーションにより容易に凝集が生じる。Ag薄膜の表面荒れを抑制するために、Ag薄膜表面にキャップ層を形成した新たな表面活性化接合を試みた。キャップ層として、Agと相互拡散しないこと、凝集しにくい材料であることからチタン(Ti)を採用した。AgおよびTi薄膜は、直径2インチの合成石英ウェハ上に、マグネトロンスパッタ法により形成した。合成石英ウェハの表面粗さ(Sa)は、0.13 nmである。膜厚は、Ti密着層5 nm、Ag薄膜30 nm、Tiキャップ層2 nmとした。キャップ層を形成しないAg薄膜の表面粗さは1.42 nm であった。一方、キャップ層を形成したAg薄膜は、より小さな結晶粒となり、表面粗さは0.73 nmとなった。キャップ層を形成したAg薄膜断面の分析結果から、Tiキャップ層はAgと相互拡散せずに表面に存在し、Ag薄膜上でTiOx層が形成されていることがわかった。キャップ層を形成したAg薄膜を用いてAg/Ag表面活性化接合を行った。接合した合成石英ウェハ間に薄いブレードを挿入し、表面エネルギーを測定して接合強度を評価した。表面エネルギーは、キャップ層を形成しなかった場合(0.6 J/m2)に比べて大幅に増加(7.2 J/m2)し、本手法の有用性を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画では、大気中で凝集を起こすことが知られている銀(Ag)薄膜に対して、厚さ数ナノメートル以下のナノキャップ層による平滑面の形成と常温接合の可能性を明らかにすることにしていた。そこで、マグネトロンスパッタ法により合成石英ウェハ上にAgおよびTi薄膜をシーケンシャルに成膜し(Ti密着層膜厚5 nm、Ag薄膜膜厚30 nm、Tiキャップ層膜厚2 nm)、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope: AFM)により表面粗さを評価した。厚さ2 nmのTiキャップ層を用いることで、表面粗さ(Sa)が1.42 nm(キャップ層なし)から0.73 nmに低減することを示した。また、Ag薄膜断面をエネルギー分散型X線分光法(EDX)により分析し、Tiキャップ層はAgと相互拡散せずに表面に存在し、Ag薄膜上でTiOx層が形成されていることを明らかにした。また、Tiキャップ層を用いたAg薄膜を用いて、Ag/Ag 表面活性化接合を実現し本手法の有用性を実証した。以上から、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、銀(Ag)薄膜に対して、厚さ数ナノメートル以下のナノキャップ層による平滑面の形成と常温接合が可能であることが明らかになったが、Ag薄膜の厚さの影響やナノキャップ層の膜厚の最適条件などは、まだ明らかになっていない。また、表面活性化として、アルゴン(Ar)の高速原子ビームを照射しているが、照射条件についても明らかになっていない。そのため、Ag薄膜やナノキャップ層の膜厚を変化させて、表面粗さを測定し、最適条件を探索する。表面活性化の条件については、ナノキャップ層をすべて除去できる照射条件などをX線光電子分光 (X-ray photoelectron spectroscopy: XPS)による表面分析を行い調査する。接合強度については、十分な強度が得られているが、界面のボイドや微細構造が明らかになっていないため、高分解能透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope: TEM)により接合界面の微細構造を明らかにする。これまでは、Ag薄膜を対象にTiキャップ層を選択したが、他の材料のキャップ層の可能性や、半導体の配線に用いられる銅(Cu)薄膜に対しても本手法の適用可能性を検討する。
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