2023 Fiscal Year Annual Research Report
磁性材料・構造を利用したスピンオービトロニクスの新展開
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23H01477
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
日比野 有岐 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (60895788)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | スピントロニクス / スピンオービトロニクス / スピン軌道トルク / ナノ構造制御 / スピンホール効果 / 磁気層間結合 / 磁気トンネル接合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来のスピントロニクス・スピンオービトロニクスにて着目されてきた非磁性材料中のスピン軌道相互作用に対して磁性材料・構造におけるスピン軌道相互作用に焦点を当てることで、スピンオービトロニクスの新展開を見出すことを目的とし、1.磁性材料におけるスピン変換現象の開拓、2.自己誘発スピン軌道トルクの観測および高効率化、そして3.カイラル磁気層間結合の系統的調査を研究項目として掲げる。今年度では主に2と3の研究項目に取り組んだ。まず研究項目2については、Ni-Fe薄膜に組成傾斜を意図的に付与することで、自己誘発スピン軌道トルクの誘発を試みた。その結果、組成勾配方向に応じた自己誘発スピン軌道トルクがNi-Fe内生じることを観測し、この現象を説明する機構を理論的にも明らかにした。研究項目3については強磁性/Ir/強磁性の三層構造を磁気トンネル接合素子の記録層に搭載することでカイラル磁気層間結合の電気的な観測を試みた。その結果、nmスケールの磁気トンネル接合素子においてカイラル磁気層間結合に起因した反転磁場シフトの観測に成功し、反転磁場シフトおよび反転保磁力の角度依存性からカイラル磁気層間結合の要因である層間ジャロシンスキー・守谷相互作用を定量的に算出することができた。また、今年度は面内磁界プローバーを導入し来年度以降の高いスループットを実現するための環境を整備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度では、面内磁界プローバーの導入と並行して組成勾配導入による自己誘発スピン軌道トルクの観測に成功・その機構を明らかにすることに加え、微小領域におけるカイラル磁気層間結合現象の観測に成功した。これらの結果は、磁気メモリへ搭載するにあたり書き込み効率を向上や無磁場下での磁化反転を実現する上で重要な知見であり、開発の新たな展開に繋がるものと考えられる。自己誘発スピン軌道トルクに関しての研究成果は、英文学術論文誌への掲載に採択された。また、予想外の成果としてアモルファス構造の非磁性材料において巨大スピンホール効果が発現することを見出し、世界最高レベルの省電力書き込みの実証が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度導入した面内磁界プローバーを駆使し、当初計画の研究を推進する。自己誘発スピン軌道トルクで得られた知見から、面直磁化膜の磁化反転の可能性やカイラル磁気層間結合を用いた磁化ダイナミクス誘起の可能性を探索する。
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