2023 Fiscal Year Annual Research Report
Multi-scale modeling of thermal and fluid flow of cryogenic liquid hydrogen applied for liquid rocket propulsion system
Project/Area Number |
23H01606
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
津田 伸一 九州大学, 工学研究院, 准教授 (00466244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 聡 九州大学, 工学研究院, 教授 (50304738)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 液体水素 / 量子性 / キャビテーション / 沸騰 / 乱流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,H3ロケットに代表される大型液体ロケットのエンジン心臓部にあたる液体水素燃料の供給用ポンプで発生するキャビテーション現象(強い乱れを伴う低圧の流れ場で生じる気液相変化現象)を対象としたうえで,既往の研究では完全に見捨てられている微小スケールで生じる沸騰の物理を正しく考慮した数理モデルの構築を目指している.そのために,2023年度は①低圧の液体水素中で生じる沸騰の微視的な様相を正しく模擬できる分子シミュレーションプログラムの構築,②キャビテーションと沸騰の双方を考慮した単一球形気泡に対する数値解析,③沸騰の物理も同時に捉え得るキャビテーション流れの巨視的な計算手法の構築および検証,の3点を進めた.このうち①については,量子性と呼ばれる液体水素特有の物理的性質を考慮できる分子シミュレーション手法に対して壁面からの加熱の影響を考慮できるプログラムを構築した.②については,低圧場において沸騰の様相も伴う気泡の体積変化や気泡内部の温度変化に対して,気液界面で生じる蒸発/凝縮の非平衡性が及ぼす影響を調べた.その結果,後述③で述べる流れ場の計算において多くの場合に仮定されている気泡内飽和(平衡)の仮定が,適切ではないことが明示された.③については,①や②において検討中の沸騰の微物理までを考慮できるように,気液相変化を伴う流れ場の気相/液相の双方の温度計算を可能とする物理モデルを構築した.また,構築した物理モデルをキャビテーション流れの計算プログラムに導入したうえで,液体水素と物性が比較的に近い液体窒素を対象とした解析を行い,既往の実験との比較を行った.その結果,構築した物理モデルを適用することで,既往の提案手法に比べて実験で得られている気泡発生部の温度を比較的精度よく予測できることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にもある通り,本研究では微視的な研究と巨視的な研究の双方を行っている.このうち,微視的な研究についてはプログラムの構築ならびに検証に多大な時間を要してきており,当初予定よりもやや遅れているのが実情である.一方で,巨視的な研究については,当初は2年目以降に予定していた内容について複数の成果が上がってきている状況である.以上のことから,総合的には概ね順調に進展していると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
まず今後の微視的解析としては,固体壁面に接した状態の液体水素の沸騰の初期過程を,昨年度までに構築してきている分子シミュレーション手法によって模擬する.これにより,壁面温度を飽和温度よりも高くした際の発泡開始までの待ち時間をモニタリングする.なお,この待ち時間の逆数は「核生成速度」と呼ばれる,発泡速度を定量づける重要な指標となる.本シミュレーション手法により,壁面温度および圧力に依存する核生成速度を数値的に取得するとともに,その結果を適切に表現し得る数理モデルを構築する.そのうえで,昨年度までに発展させてきている巨視的な熱流動解析プログラムに核生成速度に対する数理モデルも取り入れた液体水素のキャビテーションの流れ場計算を実施し,既往の実験結果との比較検証を進める.
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