2023 Fiscal Year Annual Research Report
ドリルパイプ挙動の統合的表現と計測データ融合逐次解析への展開
Project/Area Number |
23H01631
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
井上 朝哉 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 技術開発部, 主任研究員 (10359127)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 博善 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (00252601)
金子 達哉 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 技術開発部, ポストドクトラル研究員 (90963926)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | ドリルパイプダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋掘削においては,多岐に亘るドリルパイプ挙動の個々に着目した数値解析を基に,ドリルパイプ強度設計を行うが,「ドリルパイプ挙動解析の表現の不十分さ」「実現象の観察の欠如」「実際の掘削操業環境に応じた解析の欠如」の3つの課題がある.そこで,本研究では,多岐に亘るドリルパイプ挙動間の相互影響やエネルギー遷移の特徴を,理論的・実験的・数値計算的な手法にて捉えて,ドリルパイプ挙動の統合的な表現を行う.また,実計測による実挙動の観察を行う.更に,掘削データを活用したデータ融合逐次解析を提案し,システム開発および実行試験を行う計画である.当該年度においては,以下を実施した. 【1.ドリルパイプ挙動の統合的表現】ドリルパイプ挙動は流体力に直接的または間接的に起因し,流場変化が挙動に影響を与えるため,流体力の観点から各挙動の相互影響について理論的また実験的に考察することが重要である.当該年度は,水槽試験を実施し,各挙動の相互影響の考察のための基礎データの取得,および実験方法や計測方法の改善のためのデータ得た. 【2.実機計測】掘削船「ちきゅう」において,ドリルパイプの挙動撮影および潮流などの環境計測を計画しており,当該年度では,実機計測に向けた準備として,ドリルパイプ上端の挙動撮影を行う観測装置の検討および製作を行った.また,「ちきゅう」にて,観測方法,観測装置の設置場所や設置方法の確認を行い,予備計測を実施した. 【3.計測データ融合逐次解析】計測データ融合逐次解析を行うシステム開発に向けて,掘削船「ちきゅう」の掘削制御装置から取得する掘削データ種類,データ取得フォーマット,インターフェイス仕様,および通信プロトコルを確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【1.ドリルパイプ挙動の統合的表現】流体力の観点からドリルパイプ各挙動の相互影響について理論的,および実験的な考察を開始する計画であった.実験的考察に関しては,ドリルパイプ模型を用いた水槽試験装置や試験方法の検討,模型実験による基礎データの取得を行う計画であり,計画通り進捗している.但し,想定通りの複数のドリルパイプ挙動が発生しない場合もあり,相互影響の考察が実施できる段階ではなく,今回の実験で得たデータをもとに実験方法や計測方法の改善を図る.理論的考察に関しては,渦励振が発生した場合の,マグナス効果によるドリルパイプ変形量の増加の考察を計画していたが,マグナス効果によるドリルパイプ変形量の表現モデル構築に留まっている.但し,渦励振が発生した際の抗力係数の増加は一般的数値を用いることで静的問題としては検討可能であり,次年度直ぐに実施できる. 【2.実機計測】掘削船「ちきゅう」での,ドリルパイプ実機の挙動撮影はチャレンジングな実施項目であり,船の運航計画や訪船規制,また船上安全規制の影響を大きく受ける懸念がある.当該年度においては,実機計測に向けた準備として,挙動撮影装置の検討・製作,設置場所や設置方法の検討を行う計画であり,計画通り実施した.更に,予備計測まで実施し計画以上の進展である. 【3.計測データ融合逐次解析】掘削船「ちきゅう」の掘削制御装置からデータを取得し,逐次伝送し,そのデータを入力として計測データ融合逐次解析を行うシステムの開発を行う.このため,掘削制御装置のインターフェイス仕様の策定や掘削データ取得フォーマットの策定を最初に行う必要があり,計画通り実施した.
|
Strategy for Future Research Activity |
【1.ドリルパイプ挙動の統合的表現】ドリルパイプ各挙動の相互影響について理論的および実験的な考察を進めるに当たり,理論式の構築,および模型実験方法考案が課題となる.前者においては,渦励振やマグナス効果については従来の理論的考察の活用を行い,振れ回りについては未解明の部分が多く,理論式の見直しを行いたい.後者においては,複数の挙動を同時に発生させる条件を,理論式を参考にしつつ試行錯誤的に見付ける必要があり,水槽試験を計測する. 【2.実機計測】掘削船「ちきゅう」でのドリルパイプ実機の挙動撮影に向けた準備を進めており,今後は航海の際の計測を計画している.運航計画や訪船規制,また船上安全規制の影響を大きく受けるため,運用部門と連絡を密にして進める. 【3.計測データ融合逐次解析】掘削船「ちきゅう」の掘削制御装置から掘削データをするための,インターフェイス仕様や掘削データ取得フォーマットの策定を行った.今後は,データ取得装置,逐次伝送装置,および解析装置の開発を進める.システム構築や試験においては,実機計測と同様に,運航計画や訪船規制,また船上安全規制の影響を大きく受けるため,運用部門と連絡を密にして進める.また,比較的規制が少ない着岸中の機会での通信確認などを計画する.
|