2023 Fiscal Year Annual Research Report
長寿命セラミック人工関節を実現する高機能酸炭化ケイ素コーティングの開発
Project/Area Number |
23H01699
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
塩田 忠 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (40343165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉岡 朋彦 岡山大学, ヘルスシステム統合科学学域, 准教授 (50452016)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | コーティング / バイオトライボロジー / 酸炭化ケイ素 / セラミック人工関節 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,セラミック人工関節のしゅう動性向上を目指した酸炭化ケイ素(SiCxOy)コーティングの開発を目的としている.今年度は,成膜装置の構築,コーティングの密着性を確保する中間層材料の探索手法の検討,摩擦による疑似関節液中の生体高分子の変化を分析する手法の検討,を実施した.以下に今年度の成果を示す. ・ 既存の装置を改造して超高真空スパッタリング装置を構築することにより,残留酸素の低減,および,中間層とSiCxOyコーティングの連続成膜を可能とした.SiCターゲットを用いてSiCxOyコーティングを成膜し,コーティング中の酸素割合が,従来よりも低減したことを確認した.これより,コーティングの炭素(C)と酸素(O)の組成比を従来よりも広範囲に変化させることが可能となった. ・ コーティングの密着性を向上させる中間層材料探索のため,中間層材料とアルミナの界面結合エネルギーを第一原理計算により計算した.その結果,Ti系材料とアルミナとの結合が強いことが分かり,Ti系材料が中間層材料に適していることが示唆された. ・ 疑似関節液中における往復しゅう動試験により,アルミナ基板および炭化ケイ素基板の摩擦摩耗特性を測定した.疑似関節液中に含まれるタンパク質が摩擦摩耗特性に影響を及ぼすことが明らかとなり,今後測定するSiCxOyコーティングの摩擦摩耗特性に対する比較データを得た. ・ 既存の赤外吸収分光(FT-IR)装置に全反射測定ユニットを追加することにより,潤滑液中のタンパク質(アルブミン)のFT-IRスペクトルを得た.amide I 由来のピークをピーク分離することにより二次構造(α-helix)の割合を算出したところ,潤滑液中のアルブミンに変性は見られなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主な研究計画として,成膜装置の構築,中間層材料の探索手法と摩擦による生体高分子変化の分析手法の検討を挙げ,それらに対して一定の成果を得たため,順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,今年度構築した成膜装置,および,検討した中間層材料の探索手法とタンパク質の分析手法を用い,当初の研究計画通り,次の項目について研究を進める予定である. ・ 炭素(C)量と酸素(O)量の割合を系統的に変化させたSiCxOyコーティングの成膜と膜特性評価 ・ 上記のSiCxOyコーティングの疑似体液中における摩擦摩耗特性の評価 ・ 疑似関節液中の摩擦試験前後でのタンパク質の状態分析と,摩擦摩耗特性との相関関係の検討 ・ 中間層材料とSiCコーティングとの密着性評価と,中間層候補材料の決定.
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