2023 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解その場観察による溶接凝固ダイナミクスの解明と溶接技術への展開
Project/Area Number |
23H01731
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
柳楽 知也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究センター, グループリーダー (00379124)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | その場観察 / 凝固ダイナミクス / 溶接技術 / 等軸晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、大型放射光施設(SPring-8)において放射光X線イメージングとX線回折を併用したミクロンスケールでの凝固その場観察技術を用いて、Fe-Mn-Si合金を対象にオーステナイト相の等軸晶化が起こるメカニズムを調査した。その場観察では、X線イメージングによる凝固組織の観察、X線回折法による相同定、高速度カメラを利用した温度計測を全て連成し、相変態などの組織変化、温度分布の変化を取得した。 溶接速度を1から10mm/sの範囲で変化させて凝固挙動のその場観察を行った。溶接速度が7mm/s以上では涙滴状の溶融池の左右からフェライト相が柱状デンドライトとして溶接方向に対してほぼ垂直方向に直線的にビード中央部に向かって成長した。その後、左右から成長した柱状デンドライトが対峙するビード中央付近においてオーステナイト相が等軸デンドライトとして晶出し、オーステナイト相の等軸晶化が起こった。一方、溶接速度が6mm/s以下になると、溶融池の形状が涙滴状から楕円形状に変化し、溶融池界面から成長するフェライト相の柱状デンドライトは、溶接方向に向かってほぼ成長するため、ビード中央部で対峙しなくなった。その結果、オーステナイト相の等軸デンドライトの晶出は起こらなかった。オーステナイト相は、フェライト相のデンドライト樹幹においてセル状に成長した。これは、一般的なステンレス鋼で観察されるフェライト-オーステナイト(FA)モードと類似した凝固挙動であった。また、Cr/Ni当量比を低下させて、フェライト量を増加させた場合、等軸デンドライトの晶出頻度が変化する傾向が見られた。以上の結果から、オーステナイト相の等軸化は、溶融池の形態、フェライトの成長方向、フェライト量などの凝固形態に依存していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、大型放射光施設(SPring-8)において放射光X線イメージングとX線回折を併用したミクロンスケールでの凝固その場観察技術を用いて、溶接速度がオーステナイトの等軸化機構に与える影響について調査することが出来た。溶接速度の低下によって、溶融池の形態変化、結晶の成長方向や成長形態の変化が起こることが分かり、オーステナイト相が等軸晶化する臨界の溶接速度を明らかにすることに成功した。また、組成を変化させてフェライト量を増加させた場合、オーステナイト相の等軸デンドライトの晶出頻度が変化することが分かったが、定量的な評価は今後の課題である。以上の点からおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
溶接中での凝固その場観察では、X線イメージングによる凝固組織の観察と高速度カメラを利用した温度計測により、凝固過程の組織変化とその時の温度分布を連成して取得しているため、結晶の成長速度(R)と温度勾配(G)を算出することができる。GとRの関係である凝固パラメータを変化させることによって、平滑界面からセル状、柱状デンドライト、等軸デンドライトの遷移といった、凝固形態の変化を知ることができる。そこでその場観察により凝固組織マップを作成し、オーステナイト相の等軸晶化の発生条件について調査する。また、その場観察後の試料について元素マッピングを行い、溶質の濃化がオーステナイト相の等軸晶化に関わる凝固現象に与える影響について調査を行う。
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