2023 Fiscal Year Annual Research Report
低融点金属液相を反応場とした半導体気相成長プロセスの開拓
Project/Area Number |
23H01739
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野瀬 嘉太郎 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00375106)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 化合物半導体 / 気相成長 / 化学ポテンシャル / 反応場 / 蒸発 / 昇華 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,反応場である低融点金属にSnを選択し,リン化物半導体であるGaPの蒸発挙動について調べた。まず,Ga-P-Sn系におけるリン過剰側の液相面投影図および相平衡関係が明確ではなかったため,これを実験的に調査した。Ga/P比が1の試料についてはいずれの温度も液相とGaPの二相平衡が確認され,既報の状態図通りの相平衡関係,液相組成であった。一方,これまで報告のなかったGa/P比が0.33の試料についても二相平衡が確認された。Ga/P比が3の試料については,XRDから二相平衡が確認できたものの,SEM観察において,低融点であるGaが溶解してしまうなどの問題があり,定量的な分析は困難であった。以上のことから,本系においては広い組成範囲で液相とGaPの二相領域の存在が示唆された。 そこで次に,この平衡関係を利用して,二相共存状態からGaPを気相として単離することを試みた。Snの組成を80 mol%ととし,Ga/P比が3, 1, 0.33の3つの試料を作製した。これを石英アンプルに真空封入し,温度差をつけた炉内に設置することで蒸発挙動を調べた。その結果,同時に熱処理したにもかかわらず,Ga/P比が0.33の試料は付着物が顕著に確認された。この付着物をXRD, SEM-EDSで分析を行ったところ,化学量論組成のGaP単相で,Snは0.1 mol%以下であった。一方,他の組成の試料については,付着物が少量であり,分析が困難であった。以上より,単体では気化(昇華)が困難な化合物であっても液相の存在により容易に蒸発すること,さらに平衡する液相の組成によって目的化合物の蒸発挙動が大きく異なることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの硫化物半導体に加え,リン化物半導体においても反応場の影響を実証できたことは,対象とする現象が普遍的なものであることを証明するために,重要な知見が得られたと考える。他の系に対する実験が少し遅れているものの,平衡する液相組成によって,その蒸発挙動が大きく異なることは大変興味深く,メカニズムを考察する上で重要な知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
他の系についても同様に,平衡関係,および蒸発挙動の調査を行う。これにより,液相の存在によって気化が顕著になる現象が,あらゆる化合物に対して普遍的なものであることを実証していく。さらに,組成による挙動の変化や昇温脱離分析など定量的な調査を行うことにより,支配因子やメカニズムの解明へと繋げる。
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