2023 Fiscal Year Annual Research Report
Template synthesis and characterization of single-walled inorganic nanotubes
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23H01807
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
中西 勇介 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (50804324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千賀 亮典 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (80713221)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 窒化ホウ素ナノチューブ / 遷移金属カルコゲナイド / 電子顕微鏡 / カイラリティー / 化学気相成長 / ヤヌス / テンプレート |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、窒化ホウ素(BN)ナノチューブをテンプレートに用いた代表者独自の化学気相成長法(CVD法)の技術を高度化し、その原料の種類や供給方法、成長条件を変えることで、さまざまなカルコゲナイドの単層ナノチューブを合成する技術を開発した。これまで報告されていなかったセレン化物(MoSe2, WSe2)や2種類の遷移金属が含まれる混晶(Mo1-xWxS2)、さらに単層の内側と外側でカルコゲンの組成が異なる「ヤヌス型」(MoS2(1-x)Se2x)の単層ナノチューブの合成に世界に先駆けて成功した。また、BNナノチューブの外壁だけでなく、内部空間もテンプレートに用いることで、最小で直径3ナノメートルの極めて細いカルコゲナイド・ナノチューブの成長を実証した。理論上、このような微小径のカルコゲナイド・ナノチューブは量子閉じ込め効果が顕著になり、二次元シートには見られない電子物性を示すことが予想されている。 さらに、得られた単層ナノチューブの表面を透過電子顕微鏡で一本ずつ観察してカイラリティーを解析したところ、テンプレートの直径や原子配列に関わらず、ランダムなカイラリティー分布を示すことが明らかになった。このことから、本手法で得られたカルコゲナイド・ナノチューブは、様々なカイラリティー由来の性質を調べる上で最適なプラットフォームといえる。今後、得られたナノチューブの光学特性と結晶構造を一本ずつ調べることにより、長年判然としていなかったカイラリティーと電子状態の相関関係の解明が期待される。なお、上記の研究成果はAdvanced Materials誌に発表され、掲載号の表紙を飾った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
BNナノチューブの内部空間を用いた合成研究の過程で、当初予定していなかった新物質の合成・構造決定にも成功した(投稿中)。この物質は、金属クラスターを構成単位とするリボン状の原子細線である。母体となる3次元結晶は半世紀前に報告された化合物だが、複数の二次元物質からなる混合物で、X線回折法では詳細な結晶構造は困難であった。代表者は、ナノチューブの内部空間で反応を起こすことで一種類の二次元物質(ナノリボン)のみが選択的に成長することを見出した。このナノリボンを原子分解能電子顕微鏡法によってあらゆる角度から観察することにより、その構造を正確に同定することに成功した。さらに、母体の3次元結晶を剥離したところ、同様の配列構造をもつ二次元物質を単離することにも成功した。第一原理計算ではこの二次元物質は間接遷移型の半導体であることが示唆されるが、格子定数の変化に敏感で、わずかな変化が直接遷移型のバンドギャップを示すことが予想される。現時点での収率は極めて低いものの、合成条件を検討することで多量に合成され、光学素子としての研究につながる可能性もある。以上のように予想外のナノ物質の創出に成功したことから、計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は細い単層ナノチューブの収率の向上に取り組む。これまでの研究でBNナノチューブの内部空間には直径3 nm以下の極めて細いMoS2ナノチューブが成長することを見出したものの、得られるナノチューブのほとんどはBNナノチューブの外壁に巻き付くもので、内部空間にできるナノチューブの収率は極めて低い(~5%)。そのため、次年度は微小径ナノチューブの収率向上を第一に取り組み、吸収分光などの物性測定を進める予定である。具体的には、前駆体となるモリブデン塩化物とカルコゲンを比較的低温で加熱することで予めBNナノチューブ内に高収率で内包し、それらを追加熱することによって収率の向上を図る。
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