2023 Fiscal Year Annual Research Report
Experimental investigation on contribution of local heat flow and local material properties to thermoelectric performance in a macroscopic scale
Project/Area Number |
23H01854
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
宮戸 祐治 龍谷大学, 先端理工学部, 准教授 (80512780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 啓文 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (40283626)
中村 芳明 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (60345105)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 熱電物性 / 原子間力顕微鏡 / 計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請書の当初計画に従い、龍谷大学の研究代表者および大阪大学の研究分担者の研究室で所有している原子間力顕微鏡(AFM)装置: JSPM-5400の改造を実施した。まず、龍谷大学のAFM装置は真空対応可能な装置ではあるが、過去に装置を導入した当初から冷却機構や真空排気系を省いたセットアップであった。本研究の特徴は、液体窒素での冷却とヒータによる加熱により、試料局所に大きな温度勾配を与えた時の熱電特性を測定することである。そのため、装置チャンバーを真空排気することは必須である。しかし、JSPM-5400自体はサポート終了した装置で、真空排気するためのポートに取り付ける防振機構を含む重要な部分も製造中止されていた。装置メーカーとの相談も重ね、最終的に他の中古装置からの流用によって解決するとともに、ターボ分子ポンプによる高真空排気を可能にした。温度勾配を意図通りに制御しようとするところにはまだ課題は残るものの、プロトタイプ的に作製した冷却・加熱機構も装着して装置整備を進めた。また、龍谷大学および大阪大学のAFM装置は、制御コントローラに問題があり、特殊な測定も可能にすることも重要なため、汎用制御コントローラへの置き換え作業も進めた。ケルビン原子間力顕微鏡(KFM)やオープンループ電位顕微鏡とAFMポテンショメトリという手法の複合化を行うことが本研究の目標の1つであるが、必要なアンプ電子回路・カンチレバーホルダも自作し、電圧測定帯域も約100 kHzと電位計測にとって十分に高速な性能を確認した。一方、熱電材料試料としてSiナノワイヤー(Si-NW)埋め込みPEDOT:PSS薄膜を作製し、試料局所に温度勾配を与えて熱起電力による電位分布をKFMにより測定した。Si-NW上で、他の領域より電位上昇することが観察され、Si-NWの高いゼーベック係数が局所電位に影響を与えることが理解できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では容易に装置の真空化ができると考えていたが、装置メーカーの製品サポート終了の影響により、真空化のための装置整備に苦労したことや、装置の経年劣化に伴う不具合の解消など、申請時には想定していなかった問題に取り組んだことで、実施計画的には遅れ気味である。一方、研究代表者のグループではオープンループ電位顕微鏡で高精度な測定を可能するために予定しているカンチレバー加工のための形状・共振解析シミュレーション、AFMポテンショメトリ用の自作アンプ、制御コントローラの整備、局所温度勾配用試料ホルダの開発、実際の測定というように研究室所属の学生に役割分担させ、着実に進めるべきところは進めており、装置側の整備という点ではある程度進展したと考えている。ただし、本プロジェクトではケルビン原子間力顕微鏡(KFM)やオープンループ電位顕微鏡とAFMポテンショメトリという手法の複合化が重要であるが、まだ改造装置での複合計測が実現できていないので、この点を早期達成できるよう鋭意努力することが重要と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度にAFM装置整備がある程度、進展して最低限のことはできたと考えているが、装置の完成度としては十分でないところがあり、これらを改善して複合計測を早期に実現することが求められている。具体的には、冷却機構に液体窒素を用いるが、ヒータとの加熱を併用するため、液体窒素のもちが悪く、長時間の測定に耐えないなど、計測の信頼性・安定性に関わるところが重要課題として残っている。そのため、2024年度に液体窒素タンクの容量を拡大した冷却機構を新たに作製する計画である。一方、当初計画では考えていなかったが、熱電計測においてはキャリア密度分布の計測も重要と考えており、それを実現するために、非線形誘電率顕微鏡(SNDM)の導入も検討して作業を進めており、前年度にそのためのFM復調器の購入やキーデバイスとなる容量センサの発振器を入手した。それらを現有装置に組み込み、SNDMでの計測も進めたいと考えている。また、前年度、導入したデジタルロックインアンプは高機能なもので、本プロジェクトにおいても欠かせないものであるが、学生がまだ使いこなすことができておらず、研究代表者が時間をとって装置の基本的なところから教えるなど、複数の担当学生の指導にあたっている。大阪大学の研究分担者とも連携し、大阪大学での熱電材料試料の開発や装置ノウハウの共有など、相互交流も進めたいと考えている。以上の方策により、遅れを取り戻すだけでなく、新たな観点からも局所熱電物性の計測にチャレンジしたいと考えている。
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