2023 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光スイッチに基づく分子追跡法を用いた生体膜の単一分子ダイナミクス解析
Project/Area Number |
23H01923
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊都 将司 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (10372632)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 望美 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (40892683)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 単一分子イメージング / 蛍光スイッチング / 脂質膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年では比較的一般的な測定手法となった単一分子分光・イメージング手法であるが,測定対象は主として孤立した単一分子であり,多数の分子が相互作用する状況下において,一個一個の分子の動態を長時間計測することは今なお困難である。本研究では,極めて多数個の単一分子の挙動を広範な時間スケールで計測し,多数の分子が密接に,(時空間的に)階層的に相互作用して機能を発現する系に対しその機構を単一分子レベルで解明することを目標とする。対象として,脂質膜のナノスケールの微小領域における集合構造変化とそれに伴う物性変化を追跡可能とする実験系の構築と評価を実施する。 2023年度は,測定システムの構築と参照実験系の選定と評価を主眼に研究を遂行した。多数個の単一分子を長時間にわたりイメージングするためには,蛍光スイッチ特性を示す分子をプローブとして用いる必要があるが,まずはリン脂質膜に内包された蛍光分子の単一分子イメージング実現のための脂質膜の準備と測定に最適な計測システムの構築,それらの評価を行った。 また,本研究のように極めて多数個の単一分子の蛍光像を長時間にわたって測定した場合,膨大なデータを解析する手法も重要であるため,効率よくデータ解析を実施するための解析コードの開発も並行して実施した。 加えて,単一分子に比べてより耐久性が高い発光スイッチングプローブの開発も実施した。蛍光スイッチング分子のナノ粒子を調製し,CWレーザー励起下で自発的に発光の明滅を示すナノ粒子系の実現を目指し,種々の分子系でナノ粒子を作製しその発光特性を評価した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように,2023年度は脂質膜に含まれた極めて多数個の単一分子を長時間イメージングするための実験系(測定装置及び試料)の構築を主眼に研究を遂行した。参照系として,ローダミンなどの蛍光分子を含むリン脂質膜を準備し,リン脂質,溶媒,用いる容器,ガラス基板などに含まれる発光性不純物の多寡を評価し,可視光励起下でそれらの一分子イメージングに与える影響を調査した。また各種器具の洗浄方法なども検討し,一分子レベルの測定が可能な実験条件を決定した。代表的なリン脂質膜を種々の方法によりガラス基板上に成膜し,その中に蛍光分子を添加することで,一分子イメージングのための参照系を構築し脂質分子や溶媒などに含まれる発光性不純物の評価,用いるガラス基板などの評価を系統的に行い,単一分子レベルのイメージングが可能な実験系を実現した。 また,極めて多数個の単一分子の蛍光像を長時間にわたって測定したデータの自動解析ツールをPythonを用いて開発し,その評価のために,高分子薄膜中に内包された蛍光スイッチング分子を測定し,開発した解析ツールを評価した。従来のアプローチに比べて非常に高速に単一分子を追跡可能であることが確かめられた。 同時に,単一蛍光分子に比べより光退色に対する耐久性が高く,かつ蛍光スイッチング特性も示すナノサイズ発光材料の開発を進めた。消光サイトとして作用する部位がCWレーザー励起下で自発的に形成・消失し,さらにその部位に粒子内で励起エネルギーが効率的に輸送される系をデザインし,そのコンセプトに合致する分子系で構成されるナノ粒子を再沈法などにより調製し,その発光挙動を単一粒子レベルで検出し発光特性を評価した。 上記のように,研究は概ね順調に進展中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で得られた知見に基づき,代表的なリン脂質(ホスファチジルコリン(PC)など)で形成される脂質膜中に蛍光のON/OFFを光照射でスイッチング可能な分子(例:蛍光性ジアリールエテン(DAE)など)を添加した系で,多数個の単一分子の長時間イメージングする。得られたデータを解析し,脂質膜中の場所に依存した拡散挙動の違いや,その温度変化などに関する知見を得る。 同時に,多数個の単一分子の蛍光イメージを効率よく解析するための解析ツール開発を引き続き進める。解析のエラーを減少させるための測定条件の検討,解析条件の検討を進め,非常に多数個の単一分子を効率よく解析できる解析用のプログラムを実現する。 上記が達成された後は,測定から得られた多数個の単一ゲスト分子の拡散挙動と脂質膜の物性との相関の評価,ナノ相分離構造の超解像可視化,ゲスト蛍光分子の拡散係数分布のマッピングなどを行い,本手法の適用可能性を実証する。 また上記研究と並行して,蛍光スイッチング特性を示すナノ発光材料開発も引き続き進める。これまでに,ある種の蛍光分子のナノ粒子が自発的な蛍光明滅を示すことを見出しており,その詳細な機構を解明し,材料デザインの妥当性を検証する。粒子分散系溶液の分光計測,単一粒子レベルの発光分光などを通し,蛍光明滅現象を示すナノ粒子中の励起移動機構など,明滅機構解明につながる知見を取得し,新たな発光材料実現の要素となる情報を取得する。
|
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Single-Particle Fluorescence Measurement of Perylendiimide Nanoparticles2023
Author(s)
Tsukimi Iteya, Hirotaka Kageyama, Ali Eftekhari, Aude Bouchet, Michel Sliwa, Syota Hamatani, Daichi Kitagawa, Seiya Kobatake, Hikaru Sotome, Syoji Ito, Hiroshi Miyasaka
Organizer
The 31st International Conference on Photochemistry (ICP2023)
Int'l Joint Research
-
[Presentation] ペリレンジイミド誘導体ナノ粒子の発光特性2023
Author(s)
射手矢 つきみ, 蔭山 浩崇, Eftekhari Ali, Bouchet Aude, Sliwa Michel, 濱谷 将太, 北川 大地, 小畠 誠也, 五月女 光, 伊都 将司, 宮坂 博
Organizer
2023年光化学討論会
-
-
-