2023 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of Novel Superconductors and Functional Materials by Non-Equilibrium Carrier Doping Method
Project/Area Number |
23H01933
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前里 光彦 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60324604)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 非平衡キャリアドープ / 水素イオンビーム / 超伝導 / 機能性物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はKTaO3、LaMnO3などのペロブスカイト酸化物やスピン軌道モット絶縁体Sr2IrO4などを中心に、試料作製や水素イオン照射によるキャリアドープを試みた。パルスレーザー堆積法(PLD)を用いたLaMnO3およびSr2IrO4薄膜の作製においては、酸素分圧、レーザー強度、成膜温度、膜厚、基板の種類など様々なパラメータを変化させて成膜を行い、構造と物性についての知見を得ることが出来た。以下では、KTaO3の結果について詳細を記す。ペロブスカイト酸化物KTaO3の(111)単結晶基板を用いて水素イオンビーム照射によるキャリアドープを試みた。まず室温において2.5kVの加速電圧でH2+イオンビーム照射とin situ伝導度測定を行ったところ、本来絶縁体であるKTaO3は水素注入によって抵抗が劇的に減少し、金属的な電気伝導性を示した。約2.5×10^16 ions/cm^2 以上のイオン照射量では、抵抗減少はほぼ飽和した。高濃度水素注入により、抵抗は温度の2乗に比例する温度依存性を示し、フェルミ液体挙動を示した。興味深いことに、この挙動は室温付近まで見られ、電子ドープした銅酸化物超伝導体などと共通した振舞いを示すことが分かった。ホール効果の測定から負のホール係数が得られ、水素によって電子がドープされていることが分かった。これは、欠陥生成エネルギーの第一原理計算の結果と整合しており、水素が格子間水素として存在することを示している。さらに、共鳴核反応分析(RNA)によって水素の深さ方向の濃度分布を調べた。室温および100Kでの水素イオンビーム照射とin situ NRAにより、低温では最大でH1.4KTaO3の高濃度水素ドープが可能であることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パルスレーザー堆積法(PLD)を用いた酸化物エピタキシャルナノ薄膜の作製も順調に進んでいる。また、単結晶基板を用いたペロブスカイト酸化物KTaO3への水素イオンビーム照射によって4Kの低温まで金属伝導性を示すことも分かった。今後、さらに低温での測定を行う準備等も合わせて行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ペロブスカイト型酸化物KTaO3の(111)単結晶基板に対し水素イオンビーム照射を行い、4 Kまでの伝導度測定やホール効果測定を行い金属特性を示すことが分かったが、超伝導を観測するには至っておらず、さらに低温での測定が必要である。よって、物理特性測定システム(PPMS)の核断熱消磁冷凍機(ADR)オプションを用いて、100 mKまでの極低温実験を行う。特に電極端子の接触抵抗を抑制して極低温での測定が出来るように工夫しながら、水素誘起超伝導を検証する。様々な物質を用いて、PLDを用いた良質なナノ薄膜の作製と水素イオンビーム照射を行っていく。さらに、熱電特性評価システムを構築し、水素イオンビーム照射による熱電特性への影響を調べる。
|