2023 Fiscal Year Annual Research Report
反応活性種の光励起を基軸とする非レドックス型光反応の開拓
Project/Area Number |
23H01956
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
永島 佑貴 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (90880055)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 非レドックス型光反応 / 光励起種 / ホウ素アート錯体 / ヒドロホウ素化 / 理論計算 / 分光解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
非レドックス型光反応は、励起状態における結合開裂や電荷分離を利用した電子移動を伴わない光反応であり、従来法では困難な分子変換を実現する手法として古くから注目されてきた。本研究では、申請者がこれまで見出した光を利活用できる活性錯体を利用し、理論計算を積極的に組合せることで、多様なカテゴリーの非レドックス型光反応の創出を目指している。当該年度は、アニオン性ホウ素アート錯体の特性を活かすことによる非レドックス型光反応の検討を行った結果、「ジフェニルアセチレンのtrans-選択的なヒドロホウ素化反応」の開発に成功した。 アルキンのヒドロホウ素化は、材料化学や創薬化学において重要なユニットであるビニルボランを合成するため最も基本的な分子変換法の一つであり、その歴史は50年以上も前に遡る。様々な合成試薬や触媒が開発され、多様なビニルボランの合成が可能となってきたものの、「芳香環が複数存在するアルキン」に対して「trans立体選択的に」ホウ素元素を導入することは未だに困難な課題であった。そこで、非レドックス型光反応によって本課題を解決しようと検討を試みた。量子化学計算によって予測される光吸収可能なアニオン性の基質をジボロン試薬と組合せることで、「ホウ素アート錯体」の光励起状態を利用できる反応系を設計した。その結果、ジアリールアルキンのtrans-ヒドロホウ素化反応が進行することを見出した。既存の手法と比較すると、遷移金属触媒の使用や過酷な反応条件を回避することができる。さらに本反応は、ベンゼン環上とビニル基上へ一挙にホウ素元素を導入可能な初の反応例である。理論と実験の両面から反応機構を解析した結果、長波長の光吸収と励起三重項状態への速やかな移行が本反応の鍵であることを明らかにした。 本成果は、以下の学術雑誌に掲載された。Org. Lett. 2024, 26, 2180-2185.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の通り、当該年度は、アニオン性ホウ素アート錯体の特性を活かすことによる非レドックス型光反応として「ジフェニルアセチレンのtrans-選択的なヒドロホウ素化反応」の開発に成功した。研究成果は査読付き学術論文として発表するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、引き続きアニオン性ホウ素アート錯体の特性を活かした非レドックス型光反応として、ヘテロ芳香族の脱芳香族的な分子変換の開発に取り組む。また、非レドックス型光反応に適切な別の元素へも展開する。具体的には、ホウ素と同様に電気陰性度の小さい典型元素である第14族元素に着目し、高度に典型元素化された有機化合物の合成法を開発する。
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