2023 Fiscal Year Annual Research Report
Development of photoredox cascade catalyst for water splitting
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23H01969
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 厚志 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (50437753)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 光触媒 / 色素増感 / 電荷分離 / 水素 / バイオマス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では水分解光触媒系の太陽光-水素エネルギー変換効率(STH)および量子収率(AQY)を抜本的に向上させる新しい分子素子構築技術を開発するべく、以下の3戦略を展開している。 1:可視光触媒-増感色素の共増感機構の確立 2:色素多層膜+電子伝達剤の階層的電子状態に基づく電荷分離の迅速化・高効率化 3:表面修飾を利用した酸素生成光触媒系との連結と水素生成光電極化 研究初年度となる2023年度では、高い電荷分離能を実現しつつ、多様な電子源を活用可能にするべく色素多層膜に電子伝達剤を階層的に固定化した新規系「光レドックスカスケード触媒」を構築した。色素多層化光触媒ナノ粒子表面に、可視光を透過するヘキサシアニド型電子伝達剤を固定化すると、酸化還元可逆なCo(bpy)3錯体を電子源した水素生成反応において、活性が2倍以上に向上することを見出した。同時に、2電子2プロトン移動を媒介するキノン型電子源を用いても、光触媒的に水素を生成することも確認でき、様々な酸化還元可逆な電子伝達剤を電子源として利用できることも確認できた。 さらなる応用展開として、ニトロキシルラジカル型触媒を電子伝達剤とした水素生成-アルコール酸化同時駆動型光触媒も検討したところ、水溶性グリセロールのみならず、不溶性ポリマーであるセルロースを酸化しながら、水素を生成できることも確認できた。以上の成果は、色素多層系と電子伝達剤を巧みに組み合わせた本系が、太陽光水素生成反応だけでなく、バイオマスの資源化にも適応可能な有望系であることを示しており、次世代水素社会を支える基盤創出に貢献可能と期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ニトロキシルラジカル型分子触媒との連動は研究次年度以降に予定したものであるが、不溶性セルロースも酸化できるなど、期待以上の成果が得られている。同時に電子伝達剤の表面固定が電荷分離を促進する成果は、電荷分離を促すカスケード構造構築に向けて大きな自由度を与え得るものである。以上の画期的な成果が複数得られている状況を踏まえると、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度で得られたラジカル型分子酸化触媒との連動や電子伝達剤固定による高効率電荷分離に関する知見をさらに広げつつ、太陽光スペクトルの高効率利用と多様な物質変換反応への適応を目指し、以下の戦略を展開する予定である。 I:可視光触媒-増感色素の共増感機構の確立 太陽光エネルギーの有効利用には低エネルギー赤色光の利用が欠かせない。そこで赤色光を利用可能な狭配位子場を有する色素に、高エネルギー可視光を利用可能な半導体ナノ粒子を組み合わせた「共増感」機構の実現を目指す。 II:表面修飾を利用した酸素生成光触媒系との連結と水素生成光電極化 本系は配位結合可能な金属イオンを光触媒ナノ粒子表面に露出させることが可能であり、これをさらなる機能化に活用すれば、様々な電極表面へナノ粒子光触媒を広く展開させ得る。そこで表面に適切な長さのアルキルホスホン酸を表面に付与し、光触媒ナノ粒子を高分散させたインクを創出し、電極基板へ展開することで光電極の構築を目指す。
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