2023 Fiscal Year Annual Research Report
FRET色素液体ナノ油滴:高感度・高速生体成分検出材料の創出とデバイス応用
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23H01990
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
久本 秀明 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (00286642)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | イオン液体 / 色素液体 / イオンセンサー / イムノアッセイ / フェルスター共鳴エネルギー移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は最初の研究項目である酵素・過酸化水素・電解質応答性ナノ油滴の作製と性能評価を行った。酵素応答性ナノ油滴ではアルカリフォスファターゼ(ALP)を検出するために、疎水性リン酸誘導体、疎水性アクリジンオレンジ誘導体を含むイオン液体ナノ油滴を作製し、ALPへの蛍光応答挙動を調べた。その結果、20-2000 U/LのALPに応答するナノ油滴作成に成功した。また、ここでは通常用いられる蛍光基質とは異なり、リン酸誘導体と色素を分子として切り離した状態でナノ油滴に保持させるアプローチにより、簡便なナノ油滴の作製と、組成比の検討からの高感度化にも適用できることを明らかにした。 過酸化水素応答性ナノ油滴の開発では当初の予定通り過酸化水素プローブとなる疎水性蛍光色素誘導体を合成し、ナノ油滴の組成を検討したところ、疎水性アニオンよりも親水性アニオンを含むイオン液体の場合に過酸化水素応答性が向上することを初めて見出した。 アニオン応答性ナノ油滴の開発では、当初予定していたFRETドナーとなる色素の疎水性が足りないことが明らかとなったため、疎水性側鎖を導入した分子を再設計し、合成した。そのFRET効率を評価した結果、アクセプター色素を約1wt%程度添加するとFRET効率約90%以上、蛍光強度の感度として約15倍もの高感度化できることを明らかにした。ここでは分子内水素結合をもつアクセプター色素分子開発も検討し、波長のオーバーラップによるセンシング応用の可能性を見出している。また、アニオン応答性ナノ油滴材料として、フッ化アルキル基を導入した材料の利用で、環境汚染物質であるPFOSの検出に適用できることを見出した。 カチオン応答性ナノ油滴の開発では基礎検討の中で、同じイオンに対するイオノフォアでも分子構造によって応答するイオノフォアと応答しないイオノフォアがある、という大変興味深い知見を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ALP応答性ナノ油滴の開発ではこれまでに報告例のないまったく新たな応答機構である「油水界面酵素反応に基づく油滴内電荷バランス変色」の実例を初めて示すことに成功した。この方法は従来のように蛍光分子内に基質部位を持つ蛍光基質を用いなくても、それぞれ独立した分子を油滴内に保持させることによって酵素反応による変色を誘起できる新たな方法論であり、今後の発展が期待できる。また、この成果は本年の分析化学誌に投稿・受理されている。 過酸化水素応答性ナノ油滴は酵素とともにゲル化して用いる計画であり、予備実験としてアルギン酸ハイドロゲルへの過酸化水素応答性ナノ油滴包埋を検討した結果、過酸化水素への応答を確認できた。また、酵素としてグルコースオキシダーゼを同時に包埋する予備実験も試み、グルコースに対して一定の変色が得られることも確認できている。ここで合成した過酸化水素プローブは波長が合致するため、上記アニオン応答性FRETナノ油滴のFRETアクセプターにもなる。別途開発した分子内水素結合をもつFRETアクセプター分子はより高波長での検出が期待できる結果を得ており、その基礎特性は本年のAnalyst誌に掲載された。 その他の成果についても本年5月に学会にて発表予定であり、いずれの項目も一定の成果が上がっていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに予備的な検討はほぼ手を付けているため、今後は現在まで検討を進めてきているナノ油滴の高性能化を進める。特に、アニオン検出系は昨年度FRET化に成功したものの、まだFRET化できていない検出系のFRET化に力を注ぎたい。カチオンセンシングの検討では、当初予定していたアニオン性色素の場合に油水界面でのイオン交換を伴わないプロトン脱着が見られたことから、色素交換型応答機構やプロトン脱着型応答機構など、基礎検討をいくつか行った。その結果、FRET化にはカチオン性のプロトン脱着色素を疎水性カウンターアニオンとして知られるテトラフェニルホウ酸誘導体とともにナノ油滴内に保持する反応系が有効であることを示唆する結果が見出された。したがって、今後、カチオンセンシングについては新たにローダミン系のカチオン性色素をデザインし、合成・評価を進める。また、現在ドナー色素液体としてピレン誘導体から開発に着手しているが、現在の緑に加えて青・赤など、他の波長帯をカバーできる色素液体開発を行う。この開発は既に知られている他のアクセプター蛍光分子の幅を大きく広げることになるため、本法の展開が大いに期待できる。さらに、それらの反応系を集積化したマイクロ分析デバイス開発にも着手する。
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