2023 Fiscal Year Annual Research Report
化学反応のダイナミクスを基にした複数種バイオマーカーの同時識別
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23H02047
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
末松 昂一 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (90637555)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ガスセンサ / 化学反応 / 吸着 / 酸化物ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では酸化物粒子表面における可燃性ガス(特にVOCガス)の化学反応のダイナミクスを、センサの電気抵抗変化として検出することにより、VOCガスの一種であるバイオマーカーガスの識別検出を試みる。 まずは、形状および露出結晶面の異なる酸化物粒子に対し、昇温反応法(TPR)、触媒活性試験、in-situ FT-IRにより、粒子表面における可燃性ガスの反応及びガス吸着について評価した。その結果、同種の酸化物であっても粒子径や安定面露出量の違いが反応性に違いをもたらすこと、さらにはガスの反応・脱離温度に影響を及ぼすことを明らかにした。特にアルコールでは微細ナノ粒子を利用することで、粗大ナノロッドに比べてアルコールからアルデヒドの生成反応さらには二酸化炭素の生成反応温度が低減されるが確認された。また、ガスの吸着温度、反応開始温度についても酸化物粒子によりガス種の特徴が得られることを明らかにした。なお、貴金属触媒等の反応活性向上因子を付与した際には、反応が迅速化されるため、酸化物単体のみを基に、粒子径及び形状から反応性を制御することが望ましいことが明らかとなった。 さらに、電気抵抗変化と反応の相関関係を得るために、TPR測定と同様の温度プロファイルによるガスセンサの電気抵抗変化を得た。この結果から、アルコールからアルデヒド、二酸化炭素の生成と電気抵抗変化は相関関係があり、ケトン類等の他のガス種に対しても同様の傾向を示したことから、センサの応答波形を利用して化学反応のダイナミクスを捕らえることが可能であることが示唆された。2024年度では、センサの応答波形と化学反応の相関関係を利用したガス種の識別可否及びその精度について検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初計画通りに酸化物粒子表面におけるガス吸着・反応と電気抵抗変化との相関関係の検証が進んでいる。さらにセンサ素子を利用した電気抵抗測定結果からもこの傾向は得られており、今年度以降の研究遂行により、ガスの識別が可能であるため。 以上より、本研究は計画通り、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、まずは単一バイオマーカーガスの識別検出、最終的には複数種バイオマーカーガスの同時識別に向け、化学反応の非平衡過程と電気抵抗変化の相関関係について、詳細な検証を進める計画である。 現在、VOCガスの反応過程における各種化学反応(副生成物の生成反応や完全酸化反応)と電気抵抗に相関があることは明らかである。このため、吸着から反応を異なる温度で検証し、電気抵抗変化を得る。さらに得られた電気抵抗変化を基に、応答波形から反応過程を検証。最終的には多次元解析を利用してガス種識別へと展開する計画である。
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Research Products
(14 results)