2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23H02060
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
森 大輔 三重大学, 工学研究科, 准教授 (00432021)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 全固体電池 / リチウムデンドライト / 固体電解質 |
Outline of Annual Research Achievements |
リチウムイオン電池の有機電解液を無機固体電解質に置き換えた全固体電池について、リチウム金属を負極に用いることが出来れば大幅なエネルギー密度の向上が期待される。しかし,充放電に伴い析出したデンドライトが短絡を起こす危険性がある.本研究では高容量・高エネルギー密度を持つリチウム金属を負極に用いた電池の実現に向け、リチウムのデンドライト析出の抑制につながる因子を明らかにすることを目的として研究を行った。 令和5年度は研究計画に基づき、固体電解質粒界へのリチウム化合物の導入について、試料作製条件の最適化および再現性の確認を行った。SPS条件によりパイロクロア相の生成とガーネット型固体電解質の正方晶への転移が確認された。リチウム源を過剰にすることで、不純物の生成と正方晶への転移を抑制することが可能であった。試料の充填方法を改善すること再現性の高い結果を得ることが出来た。また、同様の結晶構造を持ち,低融点で比較的柔らかい他のアルカリ金属化合物についても検討を行った。リチウム化合物と同じ条件では導入した化合物が凝集する傾向が見られたが、SPSでの焼結温度を低くし、融点以下とすることで均一に分散した試料を得ることに成功した。これらの試料についても、リチウムの析出溶解試験および測定後の試料の破断面の観察により、デンドライトの抑制効果が見られることを確認した。 リチウム負極/ガーネット型固体電解質界面に金属スパッタ薄膜の導入を行い、リチウムの析出過程について検討を行った。金属薄膜の導入した試料について、リチウム溶解析出試験を行ったところ、過電圧の減少および臨界電流密度の増加が見られた。特に初期の溶解および析出について電気化学測定、断面のSEM観察、XPS測定を行い、リチウムの析出および溶出過程を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度はリチウム負極を用いた全固体電池でのリチウムデンドライト析出の抑制に繋がる因子を明らかにするために、固体電解質粒子間にリチウム化合物を導入した固体電解質複合体の作製を試みた。SPS焼成の条件を検討し、試料作製の再現性に影響する因子を明らかにした。また、異なるカチオンを含む化合物についても、焼成温度を検討することで、添加した化合物が一様に分布した試料の作製に成功した。リチウム溶解析出試験の結果、これらにおいても、臨界電流密度の増加およびデンドライト析出の抑制効果が確認できた。また、リチウム金属負極/固体電解質間に金属薄膜を導入した試料を作製し、リチウムの溶解析出機構を調べ、金属薄膜の導入によりリチウムの溶解・析出の機構に影響を与える因子を明らかにした。以上のことより、研究はおおむね順調に進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は令和5年度に引き続き、固体電解質複合体の合成を進める。組成や構造の異なる化合物について試料合成を行い、デンドライト析出の抑制に関係する因子を抽出する。また、イオン導電性の優れた化合物についても同様に検討を進め、粒子間のイオン導電性とリチウムデンドライト成長との関係を検討し、合わせて複合体全体のイオン導電率の向上を検討する。粒子間に添加する化合物と固体電解質間のイオン輸送について、モデル界面の作製を行う。リチウム金属負極/固体電解質界面間への金属膜の導入について、組成や厚みなどを変化させ、析出機構に関する検討を進める。
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