2023 Fiscal Year Annual Research Report
Integrated understanding and manipulation of hypoxic cellular functions by artificial nucleic acids with hypoxia-accumulating properties
Project/Area Number |
23H02086
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
田邉 一仁 青山学院大学, 理工学部, 教授 (40346086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川井 清彦 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (50314422)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 低酸素細胞 / 人工核酸 / ニトロベンジル基 / 遺伝子制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
固形腫瘍や虚血性疾患といった重篤な病変組織内には低酸素状態の細胞(低酸素細胞)が発生する。しかし、低酸素細胞の機能は複雑性に富み、この病的細胞が発生する仕組みや酸素応答性に関する一部の機能は明らかにされつつあるものの、現時点で分子レベルでの全容解明には至っていない。また、この細胞は病変の治療抵抗性、悪性化の原因となることから、機能解明に向けた診断技術と治療法の創出が望まれてきた。 本研究では細胞内で多様な機能を示し得る人工核酸に注目した。近年、短鎖から成る核酸は遺伝子機能を担う次世代の医薬品として、あるいは診断機能材料として注目を集めている。核酸は従来の低分子医薬品や抗体医薬品では狙えないmRNAやmiRNA等の分子を創薬ターゲットとすることが可能であり、かつ高い生体適合性と高い標的特異性をもつ。加えて、配列を設計するだけで標的や機能を変更できるという多機能性を示すことがその大きな特徴である。しかしこれまで、低酸素細胞に集積し、機能する核酸材料はほとんど開発されていない。そこで本研究では、申請者らがこれまでに開発を進めてきた人工核酸にさらに化学修飾を加え、低酸素細胞に選択的集積する機能を付与するとともに、選択的に駆動させることを目指した。今年度は、低酸素選択的集積を実現する置換基ニトロベンジル基のニトロ基の導入場所と数を変え、その集積効率の向上を図った。人工核酸の合成、化学的手法による機能評価と培養細胞を用いた評価を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、より高い選択性でがん低酸素細胞に蓄積する核酸医薬品の開発を目指し、このニトロベンジル基を改良することを試みた。具体的には、ニトロ基の位置をオルト位からパラ位に変更し、低酸素細胞への蓄積特性に変化が現れるかを検討した。ニトロベンジル基は細胞内でニトロレダクターゼ(NR)と反応し、脱離することで、人工核酸は低酸素細胞蓄積特性を示す。p-ニトロベンジル基においてNRとの反応が進行しやすくなることで低酸素蓄積能が向上することを期待した。 p-ニトロベンジル基を修飾した塩基(p-dNBT)を含むDNAオリゴマー(PN-ODN)を6段階を経て合成した。PN-ODNをNRと電子供与体NADH存在下リン酸緩衝液中37 ℃にてインキュベートし、HPLCを用いて反応を解析した。その結果、PN-ODNは既存のオルト置換体(ON-ODN)と比較して効率的な未修飾DNAオリゴマーの生成が確認できた。この結果から、PN-ODNがより効率的に低酸素細胞に蓄積し得ることが示唆された。 さらに、ヒト肺がん細胞A549細胞を用いてPN-ODNの低酸素細胞への蓄積能を調べた。PN-ODNを蛍光標識した相補鎖と二重鎖形成させ、低酸素と有酸素それぞれの条件で培養したA549細胞に投与した。続いて、共焦点レーザー顕微鏡で細胞を観察した結果、PN-ODNから成る二重鎖は低酸素細胞で強く発光しました。以上のことから、PN-ODNは高い低酸素細胞蓄積特性を示すことが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に作成した分子システムについては、今後長鎖DNAおよびRNAの修飾を試み、低酸素細胞内での選択的な遺伝子発現制御が実現できるか検討する。また、人工核酸と結合可能な発光色素や19F原子などのシグナル発信分子を設計し、低酸素細胞を可視化し、かつ低酸素セラノスティクスを実現する分子システムの構築を進める。具体的には、DNAのマイナーグルーブに結合するHoechst分子に修飾を加え、蛍光色素やNMRで検出できる19F原子を導入することを想定している。一方、担癌マウスを準備し、動物組織への人工核酸の投与と機能評価を進めていく予定である。
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