2023 Fiscal Year Annual Research Report
Microbial networks as a basis of survival strategy in nutrient-deficient enviornment
Project/Area Number |
23H02109
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
江澤 辰広 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (40273213)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉原 創 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30594238)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 菌根共生 / 窒素欠乏 / リン肥料利用効率 |
Outline of Annual Research Achievements |
沖縄県の代表的な3種類の土壌のうち、初年度は県南部に分布するアルカリ土壌であるジャーガルを対象に、サトウキビ4圃場において調査およびサンプル採取を行った。5月初旬に各圃場から4個体を選び、その個体の周囲に土壌を封入したナイロンメッシュバッグを埋設した。このメッシュバッグの網目は根を通過させないものの菌根菌の菌糸を通過させるため、菌根菌が吸収したリン酸を定量することができる。6月末に葉、根および根域土壌を採取し、根はRNA固定液に直ちに浸漬してラボに持ち帰り、葉および根域土壌は化学分析に供した。10月末に再び葉と根を採取した後、サトウキビのバイオマス生産量を測定した。また、メッシュバッグを回収して、Hedley法により各画分に残存しているリン酸量を測定した。RNA固定液に保存した根からはRNAを抽出してRNA-Seqを行い、植物、土壌、および管理要因との相関解析を行った。 サトウキビゲノムは10 - 18倍体と倍数性が極めて高く、信頼できるRNA-Seqリードのマッピング方法を確立する必要がる。今年度は、in silico解析により冗長性を取り除いた参照配列を用いてマッピングを行なった。菌根形成に関わる遺伝子群の発現や菌根形成率は、葉のリン含量、粒径組成のうちの粘土含有率、およびリン酸肥料の利用効率(=バイオマス生産量/リン酸肥料投入量)と正の相関を示し、土壌のリン酸吸収係数、陽イオン交換量、および無機態リン画分と負の相関を示した。また、菌根菌形成遺伝子/菌根形成率の高い圃場では、菌根菌菌糸による土壌の無機態リン画分の吸収が大きいことがわかった。これらのことから、サトウキビはリンに対する相対的な窒素不足の条件下で菌根形成を促進して窒素獲得能力を高めており、それはリン酸吸収係数が低く、粘土/シルト含量が高い土壌において顕著であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度のジャーガル土壌で予定していた調査、分析、および解析はほぼ予定どおりに進み、いくつかの新知見が得られているものの、RNA-Seqリードのマッピング方法にはまだ検討の余地が残されており、今年度中に解決する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、サトウキビゲノムの冗長性をいくつかの基準を設定して減少させた参照配列を作成し、植物と菌根菌の環境応答を最も鋭敏に検出できる条件の検討を行うとともに、県中部から北部にかけて広く分布する酸性土壌の国頭マージを対象に、昨年と同様の調査を行う予定である。
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