2023 Fiscal Year Annual Research Report
植物が揮発性化合物刺激を「記憶」し、次の刺激で「想起」するメカニズムの解明
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23H02140
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松井 健二 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (90199729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 貢一 筑波大学, 生命環境系, 助教 (00511263)
高林 純示 京都大学, 生態学研究センター, 名誉教授 (10197197)
塩尻 かおり 龍谷大学, 農学部, 教授 (10591208)
本庄 三恵 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (30450208)
吉村 大輔 龍谷大学, 農学部, 助手 (50973913)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 香り受容 / プライミング / 構造活性相関 / みどりの香り / トウモロコシ |
Outline of Annual Research Achievements |
植物が香り化合物に応答することは知られているが往々にして生理生態学的にありえない高濃度の香り化合物を用いて研究されている。そこで、論文検索により、低濃度の香り化合物に再現性良く応答する系としてトウモロコシ実生とヘキセニルアセテート (HAC) 蒸気が有望と考え、トウモロコシ実生へのHAC曝露実験系を構築した。この実験系を用いた検討によりトウモロコシはHAC曝露によりシスタチン遺伝子の発現誘導など顕著な応答を示すことを確認した。そこで、シスタチン遺伝子発現量をマーカーに構造活性相関解析を実施し、トウモロコシ実生は3-ヘキセノール構造を厳密に認識しており、例えば、炭素が一つ長くなった3-ヘプテノールが応答を引き起こさないことが明らかとなった。そこで、ヘキセノールとヘプテノールを用いてトウモロコシ実生の応答の時間経過を観察すると、曝露初期にはトウモロコシ実生はどちらの化合物に対しても応答するが、2時間後にはヘキセノールにだけ応答していることを見出した。つまり、トウモロコシ実生は香り化合物に対する早い応答と遅い応答があり、前者は構造特異性が低いが後者は構造特異性の高い応答であることが示唆された。またこうした香り化合物曝露で細胞内のMAPKタンパク質のリン酸化が一過的に進行することを確認した。MAPKリン酸化が構造特異的か否か確認する必要がある。一方、トウモロコシ実生をあらかじめセイタカアワダチソウ葉由来の香り化合物に曝露しておき、食害模倣処理を行うと前処理したトウモロコシ実生でジャスモン酸などの植物ホルモン類の生成が無処理植物に比べて素早いことを確認した。これはプライミング現象と考えられ、より精細な実験系の最適化を進め、プライミングを受けたトウモロコシ実生についてトランスクリプトーム解析を進めていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標は香り化合物による植物プライミング現象をエピゲノム解析により紐解くものである。そのためには再現性良く植物にプライミングを引き起こす実験系を構築する必要がある。2023年度までにトウモロコシ実生が生理生態学的にあり得る濃度のヘキセニルアセテート曝露に応答することを確認し、その上で構造活性相関解析を進めて究極構造として3-ヘキセノールを確定することに成功した。このときはシスタチン遺伝子発現を指標に応答を見ているためプライミングとは言えないが、こうした構造活性相関解析を通じてトウモロコシ実生が持つ香り受容因子に関する知見を得ることでプライミングを引き起こす最初のイベントの理解に繋がることが期待できる。一方、セイタカアワダチソウ由来香り化合物への曝露実験系を構築し、1週間にわたって香り曝露したのちに食害模倣を施してプライミングを観察した。これまでにオキソフィトジエン酸などの防衛関連植物ホルモン生合成がプライミングによってより素早く、より強く誘導されることを確認している。ただ、セイタカアワダチソウ葉由来の香り化合物の組成と濃度を制御することが困難で、プライミングの様式にやや再現性が乏しい場合があり、実験系の改善の必要がある。このようにプライミングの分子機構に迫る予備的な検討は概ね完了しており、最終的な再現性の確認を通じて2024年度以降はトランスクリプトーム解析を実施できる段階に至っていると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
トウモロコシ実生についてヘキセノール受容機構の解明を進める。今までにMAPKリン酸化を確認しているのでMAPKリン酸化を指標にしてリン酸化プロテオームを実施することでトウモロコシ実生における香り受容信号伝達経路に関わる因子を特定する。 一方、セイタカアワダチソウ曝露実験ではセイタカアワダチソウ由来香り化合物を人工的に作成し、徐放性資材を用いた香り曝露模倣実験系を構築する。その上で香り曝露、食害模倣実験を繰り返し、実験系の最適化と再現性の確認を進める。プライミングを受けたトウモロコシ実生についてはまずはトランスクリプトーム解析を進め、応答している遺伝子のプロファイリングを進める。その上で、CHIP-Seqを進め、エピゲノム解析によりプライミングによる環境シグナルの記憶機構を解明する。
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Research Products
(21 results)
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[Journal Article] Identification of a tomato UDP-arabinosyltransferase for airborne volatile reception2023
Author(s)
Sugimoto Koichi、Ono Eiichiro、Inaba Tamaki、Tsukahara Takehiko、Matsui Kenji、Manabu Horikawa, Hiromi Toyonaga, Kohki Fujikawa, Tsukiho Osawa, Shunichi Homma, Yoshikazu Kiriiwa, Ippei Ohmura, Atsushi Miyagawa, ......, Toshiyuki Ohnishi, Junji Takabayashi
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 14
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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