2023 Fiscal Year Annual Research Report
EPR・X線による深海および南極海微生物由来酵素の高活性・高安定性機構の解明
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23H02143
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
堀谷 正樹 佐賀大学, 農学部, 准教授 (80532134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 晋 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 准教授 (80283901)
杉本 宏 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 専任研究員 (90344043)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 金属酵素 / 電子常磁性共鳴 / X線結晶構造解析 / 低温適応酵素 / 熱安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで耐熱性酵素は高安定性であることから、産業用酵素などとして注目を浴び、基礎研究から応用研究まで盛んにおこなわれてきた。ところが、低温適応酵素の低温でも失活せず、相同的酵素よりも高活性な特徴は幅広い分野への応用利用の可能性が高いにも関わらず、そこまでに至っていない。これは低温適応酵素が一般的に低安定であると考えられているためである。そこで本研究では高い安定性と低温適応機構を保持していると予想される深海細菌由来酵素の遺伝子組み換え体の発現、精製系の確立を行った。深海細菌として海洋性細菌であるShewanella属の中で最も深海に生息しているShewanella benthica K99に着目した。この細菌のもつ金属酵素の遺伝子配列を大腸菌に形質転換し、遺伝子組み換え体の発現を試み、アフィニティーカラムで精製を行った。その結果、高純度酵素を得ることに成功した。この試料について活性測定を行ったところ、予想に反して低活性であったことからゲルろ過クロマトグラフィーに供した。研究対象の酵素はダイマーで機能することが報告されていたが、ほとんどがモノマーで存在していた。ゲルろ過クロマトグラフィーでダイマーに分離された酵素のみの活性を測定したところ、相同的な酵素と同様の活性能をもつことが明らかになったので、以後の実験にはゲルろ過クロマトグラフィー後のダイマー試料をしようすることにした。ダイマー試料について活性の温度依存性を調べたところ、一般的な低温適応酵素に見られる挙動をしたことから、本研究対象も低温適応酵素であることが明らかになった。そこで、研究対象および相同的な中温酵素、深海ではない細菌由来低温適応酵素の三者の熱安定性を調べたところ、深海由来のものの熱安定性が高いことが明らかになった。つまり、研究対象は低温適応しているにも関わらず、高い安定性をも保持していることを解き明かした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに進行しており、研究対象としていた酵素が当初の予想通り、高熱安定な低温適応酵素であることを解き明かすことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象に関して、X線結晶構造解析法による静的構造解析および電子常磁性共鳴法による動的構造解析より研究対象がなぜ低温適応と高安定性を獲得しているか明らかにする。
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