2023 Fiscal Year Annual Research Report
イネの生育特性に重要な葉の形態形質に関わる発生遺伝学的研究
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23H02181
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 純一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (30345186)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | イネ / 葉 / 遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
気孔の分化を制御する遺伝子の解析においては、イネPOLAR遺伝子の機能について解析を行った。発現解析の結果、3つのイネPOLAR遺伝子のうちOsPOLAR1はイネ科の気孔に特徴的な副細胞の母細胞に特異的に発現することが明らかになった。一方、OsPOLAR2 は孔辺母細胞を分化すると考えられる未分化な表皮細胞列に特異的に発現し、OsPOLAR3 については特異的な発現パターンは見られなかった。3 つのOsPOLAR 遺伝子の多重変異体を CRISPR/Cas9によるゲノム編集により作出した。その結果、ospolar1/2/3 三重変異体は異常な形状の副細胞を形成することに加えて、気孔列内における細胞の分化パターンに異常を示すことが明らかになった。OsPOLAR1, 2, 3 遺伝子間の機能分化を明らかにするために、それぞれの単独変異体、多重変異体の表現型を観察したところ、ospolar1 単独変異体で副細胞の異常が、ospolar2 単独変異体で細胞の分化パターンに異常を示した。また ospolar1/2 の二重変異体で副細胞の形状異常の頻度が増加した。一方、ospolar3 はいかなる組み合わせでも表現型に変化を与えなかった。これらのことからOsPOLAR1 は副細胞の形成過程に、OsPOLAR2 は気孔列内における細胞の分化パターンの決定と副細胞の形成過程の両方に機能を持つことが示唆された。葉の通気組織分化を制御する遺伝子の解析においては、通気組織の分化予定領域に特異的に発現する転写因子遺伝子について、パラログを含む遺伝子の多重変異体を作成した。その結果、通気組織のサイズに異常が見られる個体が出現した。このことから、これらの遺伝子は通気組織の分化に関与する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気孔の分化を制御する遺伝子の解析においては、ゲノム編集個体において明確な表現型が見られ、遺伝子間の機能分化も明らかにできた。葉の通気組織分化を制御する遺伝子の解析においては、着目している遺伝子の機能破壊個体が得られ、通気組織に異常が見られることが明らかとなった。一部の解析においては優先順位を下げているものもあるが、総合的には概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度順調に推進できた気孔の分化と葉の通気組織分化に関する遺伝子の解析をさらに発展させるとともに、優先順位を下げていた葉肉細胞の形態形成に関する解析を進める予定である。
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